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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
6kV配電系統の地絡保護とコンデンサ形地絡検出装置 片岡技術士事務所 代表 片岡喜久雄

配電系統では故障の大部分が1線地絡であるが、中性点が非接地方式のため地絡電流が少なく、また健全部分にも地絡電流が分流する。これらのことから保護継電器として電圧、電流要素を組み合わせた地絡方向継電器(DGR)を使用することも多い。この場合、電圧要素の取り込みに電源の配電用変電所では接地形計器用変圧器(EVT)が使用されるが、自家用受電設備などでは使用されず、コンデンサ形地絡検出装置(ZPD)が使用される。ここではその理由、動作原理などについて配電系統の地絡故障検出の基本事項を含めて述べる。

 

 

1 6.6kV配電系統の地絡電流検出

(1)零相変流器による地絡検出

 基本的には故障点を流れる地絡電流を検出して、遮断保護するため地絡過電流継電器(OCGR)が使用されるが、配電系統は中性点が非接地のため、地絡電流は小さく、負荷電流との判別が困難で、短絡故障のように一般の過電流継電器やヒューズによって検出、除去することはできない。

 このため配電系統では小さい地絡電流を精度よく検出するため、零相変流器(ZCT)が使用される。

 零相変流器は一次側巻線を三相導体としたもので、常時あるいは短絡故障時には各相電流のベクトル和は0で、二次側に電流は流れない(第1図)。

 一次側がケーブルである場合には一次側の絶縁が省略できる利点もある。

 しかし、この場合にはケーブルの金属シースあるいは遮へい層に流れる電流の影響を打ち消すため、ケーブルヘッドの接地線は零相変流器の中を通してから接地しなければならない。

(2)地絡電流の分流

 短絡故障電流は電源から故障点までの経路にだけ流れるが、地絡故障電流は大部分が零相充電電流であり、故障点電流は系統全体の対地静電容量を通って電源側に還流する(第2図)。

  このため、受電設備の一次側には保護責務以外の区間以外の地絡でも設置箇所より負荷側の対地静電容量による地絡電流の分流が流れる。

 したがって、配電系統が架空線主体で構内に電力ケーブルを多く使用する受電設備では地絡過電流継電器の制定に注意が必要である。第1表に6.6kVCVケーブルの零相充電電流を示す。

 地絡故障電流は普通4~10Aであることが多いが、都市部で電力ケーブルが主体の系統では20Aを超えることもある。

2 地絡方向継電器(DGR)による保護

(1)電圧要素

 継電器の感度を鋭敏に保ちながら、構内の地絡故障だけに動作する保護継電器として地絡方向継電器が使用される。動作原理は電力計と同様で、零相電圧(中性点の対地電圧)と零相電流で動作する。第2図(b)に示すように、地絡故障電流と分流電流の方向が反対であることを利用したものである。

 中性点が非接地である6.6kV配電系統では完全1線地絡時には地絡層の対地電圧は0になり、健全相の対地電圧は線間電圧の値に上昇する(第3図)。

 高抵抗地絡(微地絡)の場合は完全地絡の場合より零相電圧は小さくなるので、普通完全地絡時の20%程度を動作電圧の下限にしている。

 

(2)接地電圧変成器(EVT)による零相電圧の検出取り込み

 配電用変電所などでは同一母線から引き出されている多回線の地絡故障を適確に判別遮断するため、地絡方向継電器が広く採用されている。

 これの電圧要素取り込みのために接地電圧変成器が使われる。これは一次側を星型結線として中性点を接地し、二次側を開放三角結線としたもので、開放端には地絡故障時にだけ電圧が発生するので、これを継電器に取り込む。検出される電圧は完全地絡の場合、零相電圧の3倍になる(第4図)。

 また、この端子には限流抵抗が接続される。その値はEVTの変圧比が

 6,600/110Vの場合一般に25Ωであり、一次側の中性点と大地間に10kΩの抵抗を接続したことと等価になる。

3 コンデンサ形地絡検出装置(ZPD)

(1)受電設備などでの零相電圧の検出

 一般の配電線から受電する受電端でも構外の他設備での地絡故障による誤遮断を確実に防止するため、地絡方向継電器が使用されるが、その電圧要素としての零相電圧の検出取り込みに接地形計器用変成器(EVT)を使用することはできない。それは受電設備の地絡検出用としてEVTを設置すると、系統の中性点が多重接地になって保護継電方式にも影響し、また絶縁抵抗測定による地絡時の故障点の探索が困難になるためである。

 このため一般の配電線から受電する設備で零相電圧が必要な場合にはコンデンサ形地絡検出装置(ZPD)が使用される。

 これは第5図のようにコンデンサを接続し、地絡故障時に発生する零相電圧を分圧して零相電圧に比例した電圧を取り出すものである。

(2)ZPDの原理と構造

 A相に完全地絡が発生した場合、健全相の電圧は第3図と同様で、端子G-B間と端子G-C間には60度の位相差のある、線間電圧に相当する大きさの電圧がかかり、それぞれCbCgCcCgに分圧される。Cgにはこの二つの分圧電圧のベクトル和が加わる(第6図)。

 これは図から分かるように、3ECbCgで分圧したものと等価である。

 また、図の出力変圧器Trは、継電器のインピーダンスを一次側換算で変圧比の2乗倍に大きくして、系統への継電器接続による影響を防ぐとともに継電器回路を系統から絶縁している。

 ZPDではどのくらいの割合で零相電圧を取り込むのかをみてみる。実際の仕様の例では、Ca=Cb=Cc=C=250pFCg=0.15μF、出力変圧器の変圧比は20:1で、この場合継電器に導入される電圧は次式のとおりである。

formula001
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 完全地絡時に約1Vの電圧が継電器に導入される。

 ZPDの構造は大部分の電圧を分担するCaCbCcはエポキシ樹脂で支持がいし形に成形して(屋内使用)各相に取り付け、CgTrは別のケースに収めてCaCbCcの近傍に設置している(第7図)。