電力ケーブルの増加によって電力系統が最も影響を受けるのはその静電容量によってである。電力ケーブルの静電容量の計算方法、充電電流、充電容量の計算方法について解説する。 
        
 
      
 最近、都市近郊の用地難や都市部での環境対策から地中送配電線の建設が増大し、また、需要場所でも構内スペースの有効活用のため、電力ケーブルの使用が増えています。電力ケーブルの増加によって最も影響を受けるのはその静電容量によるものです。
 電力ケーブルの電気定数を架空電線路と比べると作用インピーダンスは1/4ぐらい。静電容量は50倍ぐらいです。このためいろいろな面で静電容量の影響が大きく出ます。これは架空線が空気絶縁のもとに設計されているので、線間
距離が1〜数m、対地間距離が10mから数10mであるのに対して、電力ケーブルでは線間は数10mm、対地間は数mm〜10数mmで、しかも、導体と大地間が絶縁物で満たされていることからきています。
 このため特に地中送電系統の大きい大都市の電力系統では変電所に大容量の分路リアクトルを設置したり、運用面で軽負荷時の電圧上昇対策としてGW、年末年始などには3回線構成の超高圧系統の1回線を停止するなど、いろいろな対策を実施しています。
 また、地絡時には地絡電流に中性点電流と系統の各相の対地充電電流がベクトル的に加わるため、電力ケーブルの多い系統では架空線主体の系統より地絡電流は大きくなります。
 さらに電力ケーブルでは静電容量が大きいため、交流での耐電圧試験は所要電源容量や試験装置が大きくなり、困難で極めて短距離のもの以外では直流で試験します。
     
 
        
 
      
 電力ケーブルの絶縁構成は同心電極です。そのため静電容量の算式は次のように求められます。第1図参照
      
      
 
絶縁物全体にかかる電圧はこれを全層にわたって積分して 
        
 また


ですから
 
ここで、


 
であり、また


であり、さらに


ですから、これらを代入して整理すれば電力ケーブルの静電容量は次式で表せます。 
 この絶縁体の内外層間を積分する型を含んだ式は静電容量だけでなく、絶縁抵抗、絶縁耐力、熱抵抗の算出などに広く利用されます。
例題1
 導体外径30mm、絶縁厚7mmの22kVCVケーブルの静電容量はどれほどか。ただし、架橋ポリエチレンの比誘電率は2.3とする。
解
 絶縁外径は導体外径に絶縁厚の2倍を加えたものであるから
      答
 0.33 μF/km
     
 
        
 
      
       現在使用されている高圧、特別高圧の電力ケーブルではすべて各相ごとに遮蔽されているので線間静電容量は存在せず、対地静電容量がそのまま作用静電容量になります。以前使用されていたベルトケーブルでは各相ごとの遮蔽がないため、線間静電容量が△結線になっていますので、△-Y変換をしてY結線になっている対地静電容量と並列に加える必要がありました。第2図参照。
 ベルトケーブルについては本シリーズの「代表的な電力ケーブル」を参照のこと。
 電力ケーブルの三相電力ケーブル充電電流


は次の式で表されます。
例題2
 275kV、こう長15km、3回線で構成されている50Hzの地中送電系統がある。(ア)送電端充電電流[A]と(イ)系統の充電容量[MVA]の値として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。ただし、電力ケーブルの静電容量は0.32μF/kmとする。
 (1)(ア)239、(イ)114
 (2)(ア)720、(イ)342
 (3)(ア)415、(イ)342
 (4)(ア)239、(イ)342
 (5)(ア)415、(イ)228
解
 系統の充電容量は3回線全体一括されたものですが、送電端充電電流は1回線の値になります。また、問題では充電電流は[A]で、充電容量は[MVA]で求めており、静電容量は[μF/km]で与えられているので単位に注意する必要があります。送電端充電電流は
 系統の充電容量は
答
 (4)
     
 
        
 
      
       地中線系統(電力ケーブル)では地絡電流に占める対地充電電流の割合が大きく、中性点非接地の高圧配電系統では地絡電流のほとんどが対地充電電流です。高圧配電系統の地絡電流と耐電圧試験について考えてみることとします。 
      
例題3
 450mの6.6kV、150mm2、静電容量0.52 μF/kmのCVTケーブルがある。三相一括で交流耐電圧試験をする場合に必要な電源容量[kVA]として最も近い値は次のうちどれか。ただし、試験電圧は10.35kV、電源周波数は60Hzとする。
 (1)10  (2)20  (3)30 (4)50  (5)75
解
 この場合試験電圧は単相です。また、三相一括なので各相の静電容量は並列になります。試験電圧による充電容量が、ほぼ試験に必要な電源容量です。
答
 (3)
 非接地系統である6kVの配電系統では地絡電流のほとんどは対地充電電流です。
 一線地絡事故についての計算には、地絡点にテブナンの定理を適用することが一般的に有効です。
 テブナンの定理は「回路網の任意の端子にインピーダンスを接続した場合、そこに流れる電流は、接続前にあった電圧を端子から見た電源側のインピーダンスと、接続するインピーダンスとの和で除したものに等しい」と定義されています。
 完全地絡の場合は任意の端子間は短絡なので電源側のインピーダンスだけを
考慮すればよく、不完全地絡の場合は地絡抵抗を接続するインピーダンスとし
ます。また、地絡電流は対地静電容量に比例して分流します。
例題4
      
 (1)(ア)7.9(イ)0.79  (2)(ア)7.9(イ)0.72  (3)(ア)2.6(イ)0.24
 (4)(ア)4.6(イ)0.46  (5)(ア)13.7(イ)1.25
解
 地絡点にテブナンの定理を適用します。地絡事故発生前の電圧はP点の対地電圧、地絡点から見た電源側のインピーダンスは、すべてのケーブルの静電容量が各相並列になったもの、また、完全地絡なのでP点と大地は短絡です。
 事故発生前の事故点の電圧は

 
 事故点から見た電源側のインピーダンスは

 
       ここで

 
 地絡電流は
 需要家への分流


は第3図を参照して
答
 (2)
 このように配電系統内に地絡事故が発生しますと接続されている需要家の構内に
事故がなくても地絡電流は分流します。