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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
対称座標法5(実践編2) 地絡回路の計算(1)一相地絡、二相短絡地絡 元東京電機大学短期大学教授 間邊幸三郎

三相回路の計算法の中でとかく理解しにくいとされている「対称座標法」について、できるだけやさしく解説し、その使い方を習得する。本講では、実践編2として、対称座標法による地絡回路の計算(1)一相地絡、二相短絡地絡について解説する。

1. 一相地絡回路

[1] 発電機端子において一相が地絡した場合

 第1図の回路のように、発電機のa相端子Aが地絡したときの地絡電流及び各相の電圧を求めてみよう。

第1図 一相地絡回路(1)第1図 一相地絡回路(1)

第1図 一相地絡回路(1)

 *** 1 回路条件 ***************************************

formula004
formula004

  *** 2 対称分変換***************************************

  電流の対称分変換は、

formula005
formula005
formula006
formula006

  電圧の対称分変換は、

formula007
formula007
formula008
formula008

  上式の要素について次式が成立する。

formula009
formula009
formula010
formula010

  *** 3 対称分回路計算 ***************************************

 次に示す「発電機の基本式」において、

formula011
formula011

  すべての行を加えると、

    左辺= formula012formula012

    右辺= formula013formula013

となり、次の電圧方程式が得られる。

formula014
formula014

  ① 式計算の場合 (13)式の電圧方程式から電流 formula015formula015 は、

formula016
formula016

  ② 図計算の場合 対称分回路から求める場合は、(5)、(9)の両式から、第2図の対称分回路を得る。

第2図 一相地絡回路(1)の対称分回路第2図 一相地絡回路(1)の対称分回路

第2図 一相地絡回路(1)の対称分回路

 したがって、第2図から、 formula017formula017 は(14)式となる。

 *** 4 逆変換 ***************************************

 各相の電流は電流の逆変換式から、次のように計算して求められる。

formula018
formula018
formula019
formula019

  各相の電圧は次の(17)式に対称分電流(4)式及び(14)式を代入して、

formula020
formula020

となる。

[2] 電源の中性点にインピーダンス formula021formula021 が接続されている場合

 回路は第3図となる。この場合の発電機端の電圧及びa相の地絡電流を求めてみよう。

第3図 一相地絡回路(2)第3図 一相地絡回路(2)

第3図 一相地絡回路(2)

 回路条件は前問と同一なので、対称分変換も前問と同一である。

 *** 1 回路条件 ***************************************

formula022
formula022

 *** 2 対称分変換***************************************

formula023
formula023
formula024
formula024

 *** 3 対称分回路計算 ***************************************

 この場合の発電機の基本式は零相回路に formula025formula025 が加わるので次式となる。

formula026
formula026

  上式ですべての行を加えると次の電圧方程式が得られる。

formula027
formula027

  ① 式計算の場合 (27)式の電圧方程式から電流 formula028formula028 は、

formula029
formula029

となる。

第4図 一相地絡回路(2)の対称分回路第4図 一相地絡回路(2)の対称分回路

第4図 一相地絡回路(2)の対称分回路

 ② 図計算の場合 対称分回路は第4図のように零相回路に formula030formula030 が追加されるだけなので、同図から formula031formula031 は(28)式となる。

 *** 4 逆変換 ***************************************

 各相の電流は、

formula032
formula032
formula033
formula033

  各相の電圧は次のように(17)式に対称分電流(28)式を代入すれば求められる。

formula034
formula034

 [3] a端子がインピーダンス formula035formula035 を通して地絡した場合

 第5図の回路でこの場合の地絡電流及び発電機端の電圧を求めてみよう。

第5図 一相地絡回路(3)の対称分回路第5図 一相地絡回路(3)の対称分回路

第5図 一相地絡回路(3)の対称分回路

 *** 1 回路条件 ***************************************

formula036
formula036

 *** 2 対称分変換***************************************

 電流の対称分変換は一相地絡回路(1)と同じである。

formula037
formula037
formula038
formula038

 電圧は回路条件が(32)式なので、電流との関係は、

formula039
formula039

となるので、電圧の対称分変換は次の解説に従って、(43)式となる。

formula040
formula040
formula041
formula041

 (43)式で、すべての行を加えると、次式が得られる。

formula042
formula042

 *** 3 対称分回路計算 ***************************************

 (43)式右辺第2項を変形すると、(45)式となるから、(43)式は(46)式となる。

formula043
formula043
formula044
formula044

  発電機基本式と(46)式を等値し((47)式)、整理すると、(48)式となり、同式を整理すると(49)式が得られる。

formula045
formula045
formula046
formula046

  前式ですべての行を加えれば(50)式となり、整理すれば電圧方程式((51)式)が得られる。

formula047
formula047

  ① 式計算の場合 電圧方程式を formula048formula048 について解けば、電流 formula049formula049 が求まる。

formula050
formula050
formula051
formula051

  ② 図計算の場合 (35)、(44)両式からこの場合の対称分回路は第6図となるので、電流 formula052formula052 は同図から(52)式となる。

第6図第6図

第6図

 *** 4 逆変換 ***************************************

 各相の電流は(34)式の関係から次式となる。

formula053
formula053
formula054
formula054

  各相の電圧は、(17)式に(53)式の関係を代入して、(58)式として求められる。

formula055
formula055
第7図 一相地絡回路(3)のベクトル図第7図 一相地絡回路(3)のベクトル図

第7図 一相地絡回路(3)のベクトル図

2. 二相短絡地絡回路

 [1] 二相短絡直接地絡回路

  第8図の回路でb相端子とc相端子とが短絡し、直接地絡したときの地絡電流及び健全相(A相)の電圧を求めてみよう。

第8図 二相短絡直接地絡回路第8図 二相短絡直接地絡回路

第8図 二相短絡直接地絡回路

 *** 1 回路条件 ***************************************

formula056
formula056

  *** 2 対称分変換 ***************************************

formula057
formula057
formula058
formula058
formula059
formula059
formula060
formula060

  *** 3 対称分回路計算 ***************************************

 発電機の基本式((7)式)を電流の対称分について解き、(6)式の関係を代入すれば、(9)式を得る。

formula061
formula061
formula062
formula062

  (9)式の各行をすべて加えると次式となり、(11)式のように formula063formula063 が求まる。

formula064
formula064
formula065
formula065

 ① 式計算の場合 電流の対称分は(9)式に(11)式の formula066formula066 を代入して(12)式を得、同式を整理して、(14)式として求まる。

formula067
formula067

 ② 図計算の場合 (4)、(6)両式から第9図の対称分回路を得る。

第9図 二相短絡直接地絡回路の対称分回路第9図 二相短絡直接地絡回路の対称分回路

第9図 二相短絡直接地絡回路の対称分回路

 したがって、電流 formula068formula068 は同図から次の各式で求められる。

formula069
formula069
formula070
formula070
formula071
formula071

 *** 4 逆変換 ***************************************

 各相の電流は、

formula072
formula072

  各相の電圧は、

formula073
formula073

[2] 二相短絡インピーダンス地絡回路

  第10図の回路でb相端子とc相端子とが短絡し、インピーダンス formula074formula074 を通して地絡したときの地絡電流及び発電機端の電圧を求めてみよう。

第10図 二相短絡インピーダンス地絡回路第10図 二相短絡インピーダンス地絡回路

第10図 二相短絡インピーダンス地絡回路

  *** 1 回路条件 ***************************************

formula075
formula075

 *** 2 対称分変換 ***************************************

formula076
formula076

  前式のすべての行を加えると、

formula077
formula077
formula078
formula078

  前式で第2行と第3行は等しいので、

formula079
formula079

  電圧と電流との関係は回路条件から、

formula080
formula080

であり、前式の対称分変換はZI項の対称分が(31-1)式で,その結果は(32)式となるので、対称分電圧は(33)式となる。

formula081
formula081
formula082
formula082

  (33)式で第1行から第2行を引くと(34)式となり、(35)式の電圧方程式が得られる。

formula083
formula083

  *** 3 対称分回路計算 ***************************************

 ① 式計算の場合

formula084
formula084

  前式を発電機の基本式と等値すると(37)式、更に整理すると、(38)式となり、

formula085
formula085
formula086
formula086

 前式を電流の対称分について解けば(39)式が成立し、同式を(7)~(14)式に倣って解けば(40)式を得る。

formula087
formula087

  ② 図計算の場合 (27)、(29)、(35)式の3式の関係は、対称分回路が第11図であることを示している。

第11図 二相短絡インピーダンス地絡回路の対称分回路第11図 二相短絡インピーダンス地絡回路の対称分回路

第11図 二相短絡インピーダンス地絡回路の対称分回路

  したがって、電流 formula088formula088 は同図より、次のように計算される。

formula089
formula089
formula090
formula090
formula091
formula091

 *** 4 逆変換 ***************************************

 各相の電流は、

formula092
formula092

  各相の電圧は、

formula093
formula093