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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
アナログ計器の種類・構造・動作原理 富士テクノサーベイ(株) 山崎 靖夫

アナログ計器は駆動・制御・制動装置からなること、各種の指示計器の各種類ごとの構造と動作原理について解説する。

〔1〕 アナログ計器の三大要素

(a) 駆動装置

 駆動装置はアナログ計器を特徴付けるものであり、測定量を駆動トルクに変換して指針などの可動部分を動かす装置である。駆動装置の詳細は次項で説明する。

(b) 制御装置

 駆動装置は測定量を指示するための駆動トルクを発生する。しかし、駆動トルクだけでは指針が振り切れてしまい、適切な測定量を指示することができない。制御装置は駆動トルクに対して計器の可動部分(指針)を測定量に応じた位置に止める制御トルクを発生する役割を担っている。

 アナログ計器に最も多く用いられている制御装置として、渦巻ばねや張りつり線(トートバンド)がある。これはりん青銅の弾性を利用して制御トルクを発生させるものである。そのほかの制御装置として比率形計器に用いられる電気制御装置、磁力計に用いられる磁気制御装置などがある。

(c) 制動装置

 測定量として発生した駆動トルクと制動装置が発生するトルクの応答が不適切であると指針が正しい計測量を指示するまで時間がかかる。制動装置は指針を速やかに静止させるための制動トルクを発生する装置である。

 制動装置の制動状態を表す指標として第1図に示すような、①過制動、②臨界制動、③不足制動がある。このうち最も速く測定量を指示する状態が臨界制動であり、この状態に制動装置を調整することが望ましい。

第1図 指針の運動と制御トルクの関係第1図 指針の運動と制御トルクの関係

 制動装置には以下に示すものがある。

 ① 空気制動:アルミニウムの薄板でできた羽根の空気抵抗を利用

 ② 油制動 :空気制動の空気の代わりに油を用いて制動力を強化

 ③ 電磁制動:磁界中の金属が動くことによって発生する渦電流による電磁力を利用

〔2〕 アナログ計器の種類

(a) 可動コイル形

 永久磁石などで発生した磁界中にコイルを配置して電流を流すとトルクが発生する。可動コイル形はこのトルクを利用した直流専用の計器である(第2図)。

第2図 可動コイル形計器の構造第2図 可動コイル形計器の構造

 可動コイル形の特徴は感度が高く、消費電流が小さいことである。この計器は直流専用であり、交流に接続した場合はコイルが発生する交番磁界によって指示器が振れず、計測することができない。

 可動コイル形は平均値を示し、目盛は等間隔の平等目盛となる。

(b) 誘導形

 交流の磁界中に導体を置くと電磁誘導作用によって導体に渦電流が流れる。誘導形はこの渦電流と磁界の相互作用によって駆動トルクを発生させて計測する計器で交流専用である(第3図)。

第3図 誘導形の原理図第3図 誘導形の原理図

 誘導形は実効値を示し、電力計の場合は平等目盛となるが、電流計、電圧計の指示は不平等目盛となる。

(c) 振動形

 長さのわずかに異なる薄鋼片を多数整列させ、これに交流電磁力を与えると固有周波数の一致した薄鋼片が振動する。振動形はこの原理を応用した計器が振動形であり、周波数測定に用いられる。ただし、使用周波数は1,000Hz以下の低周波交流に限られる。

(d) 電流力計形

 第4図に示すように固定コイルと可動コイルの二つのコイルに電流を流すと、それぞれのコイルにトルクが発生する。このトルクを駆動トルクとして利用した計器が電流力計形である。電流力計形は、交直両用の計器である。

第4図 電流力計形計器の構造第4図 電流力計形計器の構造

 電流力計形は実効値を示す。目盛は電力計の場合、平等目盛であり、電流計、電圧計の指示は2乗目盛となる。

(e) 可動鉄片形

 コイルに発生した磁界中に軟鉄を置くと磁気誘導作用を生ずる。可動鉄片形はこの作用を利用した交直両用の計器である(第5図)。

第5図 可動鉄片形計器の原理第5図 可動鉄片形計器の原理

 可動鉄片形は実効値を示し、2乗目盛となる。

(f) 整流器形

 可動コイル形計器と整流素子を組み合わせた計器で、第6図に示すように整流素子で交流を直流に整流した後、可動コイル形計器で計測する。整流器形は可動コイル形計器と組み合わせているため、交流用計器としては最も感度が高く、消費電力が少ないという特徴がある。

第6図 整流形計器の原理図第6図 整流形計器の原理図

 整流器形は平均値を示し、目盛は可動コイル形同様、平等目盛である。

(g) 熱電形

 熱電形は第7図に示すように測定電流を熱線に流し、このとき生ずる熱を熱電対で熱起電力に変換して可動コイル形計器を駆動する計器である。熱電対はインダクタンスをもたないよう熱線を短くしているため、直流から高周波の交流まで用いることができる。

第7図 熱電形計器の原理図第7図 熱電形計器の原理図

 熱電形は実効値を表し、不平等目盛である。

(h) 静電形

 静電形は固定電極と可動電極にそれぞれ電圧を印加したときに発生する静電力を駆動トルクとして利用した交直両用の計器である(第8図)。この計器は電圧を利用してトルクを発生させている。静電形は主として高電圧用の計器として用いられ、実効値を指示し、目盛りは不平等目盛りである。

第8図 静電形計器の原理第8図 静電形計器の原理

 これらの指示計器を駆動トルクの発生方法によって分類したものを第1表に示す。

第1表 指示電気計器の分類第1表 指示電気計器の分類

【例題1】 指示電気計器について次の記述のうち、誤っているのはどれか。

 (1) 静電形計器は、金属極板間に働く静電力を利用するもので、交直電流両用の高電圧を測定するのに適している。

 (2) 熱電形計器は、電流による発熱を利用するので、高周波用の測定に適している。

 (3) 誘導形計器は、渦電流と磁界の電磁作用を利用しており、商用周波数の測定、特に電力量の測定に適している。

 (4) 可動コイル形計器は、永久磁石の磁束と電流の相互作用を利用するので、交流電流の測定に適している。

 (5) 可動鉄片形計器は、コイルの磁界内にある鉄片に働く電磁力を利用しており、商用周波数の電流、電圧の測定に適している。

 〔答〕(4)