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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電気設備技術基準・解釈の解説〔その3〕電線と高圧・特別高圧機器の施設 総務担当理事 竹野 正二

本講〔その3〕では、電線と高圧・特別高圧機器の施設に係る条文について紹介する。

1 電線の性能・規格

 (1) 電線の性能

 電線の性能は、電気設備技術基準〔以下、「電技省令」という。〕第5条(電路の絶縁)、第6条(電線等の断線防止)、第21条(架空電線及び地中電線の感電防止)及び第57条(配線の感電又は火災の防止)に基づき、電技解釈第5条から第11条に性能及び規格が規定されている。

 (a)基本的な事項の規定(電技解釈第3条第1項と第2項)

 電技解釈第3条第1項・第2項

 1 電線には、電気用品安全法の適用を受けるものを除き、次の各項に適合する性能を有するものを使用すること。

 2 電線は、通常の使用状態における温度に耐えること。

 第1項は、電気用品安全法との二重規制を避けるために入れられているもので、解釈の規定では電気用品安全法の適用を受ける電線(絶縁電線では600V以下で使用される断面積100mm2以下のもの、ケーブルでは6心以下のもの)は、規定していない。

 第2項は、電線の許容電流以下で使用することが規定されているが、電線ごとの具体的な許容電流の数値は規定してなく、JIS規格などに任せている。

 (b)電線の種類に応じた性能を規定 

 電線の性能は、第5条から第11条の各電線の規定の条文の条項に規定されている。各電線の規格は、各条文の第2項以降に掲げられている。電技解釈の前書きに記されているように、性能規定と規格の規定のいずれかに適合していれば省令を満足するものとしている。

 (2) 絶縁電線に係る規制の基本

 ① 絶縁電線は、「構造」「絶縁体の厚さ」及び「完成品の耐圧試験」だけが規定されている(電技解釈第5条)。

 ② 高圧と特別高圧の絶縁電線については絶縁体の厚さは規定されていない

 ③ 完成品の耐圧試験に耐える絶縁があればよいことになっている。

 ④ 低圧の場合は、耐圧試験だけでは絶縁物の物理的な強さの点から絶縁体の厚さが規定されている。

 絶縁電線に係る規制(電技解釈第5条)

 ① 構造 絶縁物で被覆した電気導体であること。

 ② 低圧絶縁電線の絶縁体の厚さは、「別表4」に規定する値の90%以上、かつ、最小厚さは80%以上であること。

 ③ 完成品は、清水中に1時間浸した後、導体と大地との間に「表5-1」の試験電圧を1分間加えたときこれに耐えること。

  「別表4」では、単線は0.8から5.0mmまで、より線では0.75mm2以上のものについてビニル、ポリエチレン、ふっ素樹脂、天然ゴム、ブチルゴム等の種類に応じて絶縁体の厚さが規定されている。

 5-1表 絶縁電線の試験電圧

絶縁電線の種類 交流電圧(V)
低圧絶縁電線 導体の断面積が300mm2以下のもの 3,000
導体の断面積が300mm2を超えるもの 3,500
高圧絶縁電線 12,000
特別高圧絶縁電線 25,000

 (3) ケーブル

 (a)低圧ケーブル

 ① 「構造」は、絶縁物で被覆した上を外装で保護した電気導体であること

 ② 「絶縁体の厚さ」は、低圧絶縁電線と同じ。

 ③ 「完成品の耐圧試験」は、ケーブルの導体相互間又は導体と大地間に「別表11」に示された試験電圧を1分間かけて耐えること。

 別表11 低圧ケーブルの試験電圧

導      体 試験電圧
(交流〔V〕)
成形単線及び
より線(公称断面積〔mm2〕)
単線(直径〔mm〕)
8以下 3.2以下 1,500
8を超え30以下 3.2を超え5以下 2,000
30を超え80以下 2,500
80を超え400以下 3,000
400を超えるもの 3,500

 (b)高圧ケーブル

 ① 「構造」は、 絶縁物で被覆した上を外装で保護した電気導体において、外装が金属である場合を除き、単心は線心の上に、多心は線心をまとめた上若しくは各線心の上に金属製の電気遮蔽層を有するものであること。

 ② 「絶縁体の厚さ」は、規定なし。

 ③ 「完成品の耐圧試験等」は、ケーブルの導体相互間又は導体と大地間に、使用電圧が3,500V以下のものにあっては9,000V、使用電圧が3,500Vを超えるものにあっては17,000Vの交流電圧を連続して10分間加えたときこれに耐えるものであること。このほか、絶縁抵抗については、電線の場合と同様に別表6の値以上であることが規定されている。

 (c)特別高圧ケーブル

 ① 「構造」は、絶縁物で被覆した線心の上に金属製の電気遮蔽層又は金属被覆を有するものであること。

 ② 「絶縁体の厚さ」は、規定なし。

 ③ 「完成品の耐圧試験等」は、特に規定なし。

2 電線の接続

 電線を接続に関しては、電技省令第7条に基本的なことが規定され、これを受けて解釈第12条に具体的に規定されている。

 電技省令第7条

 電線を接続する場合は、接続部分において電線の電気抵抗を増加させないように接続するほか、絶縁性能の低下(裸電線を除く。)及び通常の使用状態において断線のおそれがないようにしなければならない。

 〔電技解釈第12条の要旨〕

 電線を接続する場合は、第192条(電気さく),第181条(小勢力回路)又は第182条

 (出退表示灯)の規定により施設する場合を除き、電線の電気抵抗を増加させないように接続するほか、次の各号によること。

 (1)裸電線相互又は裸電線と絶縁電線、キャブタイヤケーブル、ケーブルとを接続する場合

 イ 電線の引張強さを20%以上減少させないこと。

 ロ 接続部分には、接続管その他の器具を使用し、又はろう付けすること。

 (2)絶縁電線相互又は絶縁電線とコード,キャブタイヤケーブル若しくはケーブルと接続する場合

 ① (1)イとロの規定に準ずるほか

 ② 接続部分の絶縁電線の絶縁物と同等以上の絶縁効力のある接続器を使用する。

 ③ 接続部分をその部分の絶縁電線の絶縁物と同等以上の絶縁効力のあるもので十分被覆

   すること。

 (3)コード相互、キャブタイヤケーブル相互、ケーブル相互又はこれらのもの相互を接続する場合

 コード接続器、接続箱その他の器具を使用すること。ただし、断面積8mm2以上のキャブタイヤケーブル相互を接続する場合の特例あり。)

 (4) 導体にアルミニウムと銅を使用する電線とを接続する等,電気化学的性質の異なる導体を接続する場合には,接続部分に電気的腐食が生じないようにすること。

 (5) 導体にアルミニウムを使用する絶縁電線又はケーブルを屋内配線,屋側配線又は屋外配線に使用する場合は、次のいずれかによる。

 ① 電気用品安全法の適用を受ける接続器を使用する。

 ② 日本工業規格 JIS C 2810(1995)「屋内配線用電線コネクタ通則」の「4.2 温度上昇」、「4.3 ヒートサイクル」及び「5 構造」に適合する接続管その他の器具を使用すること。

3 高圧・特高機器の施設

 高圧又は特別高圧の電気機械器具の施設については、基本原則が電技省令第9条に規定されており、これを受けて電技解釈第21条から第25条までに離隔距離など具体的に規定されている。

 電技省令第9条

 1 高圧又は特別高圧の電気機械器具は、取扱者以外のものが容易に触れるおそれがないようにしなければならない。

 2 高圧又は特別高圧の開閉器、遮断器、避雷器その他これに類する器具であって、動作時にアークを生じるものは、火災のおそれがないよう木製の壁又は天井その他の可燃性のものから離して施設しなければならない。

 (1) 高圧用の機械器具の施設(電技解釈第21条)

 高圧の機器については、発電所や変電所等一般の人が入れない場所に施設されるものを除き、次の各号のいずれかにより施設することが規定されている。

 ① 機械器具の周囲に人が触れるおそれがないように適当なさく、へい等を設け、さく、へい等との高さとさく、へい等から充電部分までの距離との和を5m以上とし、かつ、危険である旨の表示をする場合。

 ② 機械器具(これに附属する電線にケーブル又は引下げ用高圧絶縁電線を使用するものに限る。)を地表上4.5m(市街地外においては4m)以上の高さに施設し、かつ、人が触れるおそれがないように施設する場合。

 ③ 工場等の構内において、機械器具の周囲に人が触れるおそれがないように適当なさく、へい等を設ける場合。

 ④ 機械器具を屋内の取扱者以外の者が出入りできないように設備した場所に施設する場合。

 ⑤ 機械器具をコンクリート製の箱又はD種接地工事を施した金属製の箱に収め、かつ、充電部分が露出しないように施設する場合。

 ⑥ 充電部分が露出しない機械器具を人が容易に触れるおそれがないように施設する場合。

 (コメント)②は道路などに施設される架空電線の高圧機器を対象としている。⑤は高圧のキュービクルが対象となる。

 (2) 特別高圧用の機械器具の施設(電技解釈第22条)
特別高圧用の機械器具(これに附属する特別高圧用の電気で充電する電線であって、ケ

 ーブル以外のものを含む。)の施設も高圧機器の場合とほとんど変わらないが、電圧が高く

 なるに従って離隔距離を大きくとることが異なるだけである。次のような特別な設備にはそれぞれ特別な規定があり、この規定は適用されない。

 第191条第1項第二号ただし書(電気集塵装置の一部)、若しくは第194条第2項及び第3項(エックス装置の一部)

 ① 周囲に人が触れるおそれがないように適当なさくを設ける。

  31-1表d1:さくと充電部の距離 d2:さくの高さ)

使用電圧の区分 d1d2
35kV以下 5m
35kVを超え
160kV以下
6m
160kVを超えるもの 6mに160kVを超える10kV又は
その端数ごとに0.12mを加えた値

 ② 機械器具を地表上5m以上の高さに施設し,充電部分の地表上の高さを22-1表の左欄に掲げる使用電圧の区分に応じ,それぞれ同表の右欄に掲げる値以上とし,かつ,人が触れるおそれがないように施設すること。

 ③ 電技解釈第21条第1項第七号には、地中配電線として使用され始めた35kV以下の機器を道路上に施設する場合の規定がされている。

 六 日本電気技術規格委員会規格 JESC E2007(2002)(35kV以下の特別高圧用機械器具の施設の特例)の「2. 技術的規定」によること。

 (コメント)日本電気技術規格委員会規格JESC E2007に規定する施設方法に適合すれば35kV以下の特別高圧用機械器具を路上等へ施設することを認めたものである。なお、この規定により施設する際には,以下の条件について満足する必要がある。

 ① 外箱の温度上昇を80℃以下に抑える。

 ② 故障時の外箱の電位上昇による接触電圧及び歩幅電圧を IEC 61200-413(間接接触に対する保護)において,通常の状態で連続的に接触していても安全な交流電圧としている50V以下に抑える。

4 発電所等のさく・塀の施設

 電技解釈第38条、第39条で明らかなように高圧機器を施設する場合に、発電所や変電所に施設する場合を除くことになっていたが、これらの場所には、電技省令23条第1項により次のように規定されている。

 電技省令23条

 1 高圧又は特別高圧の電気機械器具、母線等を施設する発電所又は変電所、開閉所若しくはこれらに準ずる場所には、取扱者以外の者に電気機械器具、母線等が危険である旨を表示するとともに、当該者が容易に構内に立ち入るおそれがないように適切な措置を講じなければならない。

 2(省略)

 

 この電技省令を受けて電技解釈第38条に具体的に施設方法が次の項目のように規定されている。

 第1項 屋外の発変電所

 第2項 屋内の発変電所

 第3項 第一号 工場内の発変電所(第1項及び第3項によらないことができる。)

  第二号 工場内以外の発変電所

 (1) 屋外発電所等のさく・塀の施設〔電技解釈第38条第1項・第2項〕

 第1項では、さく・へいの施設と出入り口に立ち入り禁止の表示及び施錠装置の施設を義務付けており、同項第二号では電圧に応じて38-1表の離隔をとることを規定している。

 (2) 屋内発電所等の施設(電技解釈第38条第2項)

 出入り口に立ち入り禁止の表示及び施錠装置の施設等屋外の場合と同じであるが、堅牢な壁を施設することにより、立ち入り禁止の目的を達する規定が追加されている。

 (3) 工場内の高圧の発変電所(電技解釈第38条第3項第一号)

 一般公衆が立ち入りできないように、さく・へい等をしてある工場構内の高圧設備がある発電所等の施設に関しては、次のように施設することにより、(1)、(2)の規定によらないこととされている。

 ① 機械器具は、地表上4.5m以上

 ② 機械器具を屋内の取扱者以外の者が出入りできないように設備した場所に施設する。

 ③ 機械器具をコンクリート製の箱又はD種接地工事を施した金属製の箱に収め、かつ、充電部が露出しないように施設する場合。

 ④ 充電部が露出しない機械器具を人が容易に触れるおそれがないように施設する場合。

 (4) 工場内の特別高圧の発変電所(電技解釈第38条第3項第一,二号)

  (3)の条件と同じ工場内に特別高圧の設備がある発電所等に施設については、①の機械器具の地表上5m以上、充電部部分の地表上の高さは前「発電所等のさく・塀の施設-3」の表の値以上とすることと、③の場合に、機械器具を絶縁された箱又はA種接地工事を施した金属製の箱に収めることが異なるが、その他に関しては同じである。