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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
計器の測定範囲の拡大 東京電気技術高等専修学校 講師 福田務

一般に使われている電流や電圧の大きさを、直接、指示計器で測定しようとしても、それには自ずから限度がある。そのため、高電圧・大電流を測定する場合には、適当な測定範囲拡大のための結合器具を必要とする。それに適うものとしては、直流用では分流器・倍率器及び分圧器があり、交流用では計器用変成器(変流器・計器用変圧器及び計器用変圧・変流器の総称)がある。以下、これらの原理、構造と正しい使い方を解説する。

1.分流器
 直流電流の測定には、もっぱら可動コイル形計器が使われるが、計器の可動コイルに流すことのできる電流は、せいぜい数十mAであるから、それ以上の電流を測定しようとする場合は、必ず分流器を使用しなければならない。 第1図はその測定回路を示したもので、分流器の抵抗を formula001formula001 、その端子電圧を formula002formula002 、電圧端子から計器(mV計)端子までの接続導線の抵抗を formula003formula003formula004formula004 、計器の動作電流を formula005formula005 、その内部抵抗を formula006formula006 、測定しようとする電流を formula007formula007 とすれば、
formula008
formula008
 上式を整理して formula007formula007 を求めると、
formula009
formula009
となり、計器の動作電流の formula010formula010 倍まで測定範囲を拡大できる。
 一般に、分流器が計器に内蔵されている場合は、 formula011formula011formula012formula012 よりはるかに大きいので接続導線の影響は無視できるが、分流器が外付けされ、計器と分流器の位置が離れている場合には上記の関係は誤差を生む。分流器が計器に内蔵された場合は、いわゆる電流計で、目盛がAまたはkAで表示されているので、そのまま読みをとればよいが、独立した分流器とmV計を併用する場合の電流 formula013formula013 を求めるには次の式より求めることになる。
 mV計の指示を formula014formula014 とすると formula015formula015   formula016formula016  これを(1)式に代入し
formula017
formula017
よりformula013formula013 を求めることができる。


2.倍率器
 計器に直列に接続して、電圧の測定範囲を拡大するために使われる抵抗器を倍率器という。第2図は倍率器によって計器(mA計)の測定範囲を拡大する場合の回路図を示したものである。
 この倍率器とともに計器は、動作電流が10mA以下の電流計である。いま、回路に流れる電流を formula019formula019 、倍率器の抵抗を formula020formula020 、計器の内部抵抗を formula021formula021  とすれば、測定しようとする電圧 formula022formula022 は、
formula023
formula023
となり、 formula024formula024formula025formula025 の値が分かっていれば、mA計の読みから(3)式により formula026formula026 の値が求められる。倍率器が計器に内蔵されている場合は、計器の端子電圧を formula027formula027 とすれば、 formula028formula028 であるから、(3)式に代入して formula029formula029 となり、この formula030formula030 が計器に目盛られている。多レンジの電圧計は、第3図のようにいくつかの抵抗を直列に接続してある。
 静電電圧計の測定範囲を拡大するためには、コンデンサ倍率器を使う。 第4図はコンデンサ倍率器の原理図で静電容量 formula031formula031 の静電電圧計に、静電容量 formula032formula032 のコンデンサを直列に接続した場合、電圧計の指示を formula033formula033 とすると、測定しようとする電圧 formula034formula034 は次式で与えられる。
formula035
formula035
 分圧器は、測定しようとする電圧 formula036formula036 を抵抗によって分圧し、その分圧電圧 formula037formula037 を直流電位差計などの電圧測定器で測るようにしたもので、倍率器に比べて精密な測定ができる。抵抗分圧器とコンデンサ分圧器がある。
 分流器や倍率器は、主として直流の電流及び電圧の測定範囲を拡大するためのもので、交流ではほとんどの場合、計器用変成器が使用される。計器用変成器の役目は、計器の測定範囲を拡大して、電流や電圧を計測に適した値にするとともに、計器を高電圧回路から絶縁して、これを保護することである。この後半の働きは分流器や倍率器では出来ない。したがって、原理構造は、普通の変圧器と変わりないが、変圧比及び絶縁に重点を置いているので、構造は非常に異なっている。


3.変流器 (CT)
 CTは、電流計の電流コイルを二次側の負荷とする計器用変成器で、一次側は、測定しようとする電流が流れている回路に直列に接続する。第5図はCTによって電流計の測定範囲を拡大する場合の回路図を示したものである。この回路で、CTの変流比(実際に流れた一次電流と二次電流の比)を formula038formula038 、二次電流を formula039formula039 とすると、一次電流は次式で求められる。
formula040
formula040
 CTの定格二次電流は、0.2級交流電流計の最大目盛値の定格電流にあわせて5Aのものが大部分であるが、1A(保護継電器用)のものもある。


4.計器用変圧器 (VT)
 VTは、電圧計の電圧コイルを二次側の負荷とする計器用変成器で、一次側は測定しようとする回路に並列に接続する。第6図はVTによって電圧計の測定範囲を拡大する場合の回路図を示したもので、変圧比を formula041formula041 、電圧計で測定した二次電圧を formula042formula042 とすると、測定しようとする一次電圧 formula043formula043 は、次式で与えられる。
formula044
formula044
 CTは直列機器、VTは並列機器であることを認識しておく必要がある。VTの定格二次電圧は、110V、150V、 formula045formula045 Vの3通りある。


5.計器用変圧変流器 (VCT)
 VCTは、CTとVTを一つにまとめ、外箱に収納した計器用変成器で、もっぱら電力需給用に使用されている。


6.計器用変成器の正しい使い方
 計器用変成器の一次側には、アルファベットの大文字、二次側には小文字を用いて端子記号を表示するように決められている。第7図は単一比のCT及びVTの端子記号を示したものである。CTの場合は、電源側にK端子、負荷側にL端子を接続し、VTの場合には、高電位側にU端子低電位側にV端子を接続する。使用中、誤ってCTの二次端子を開放したり、VTの二次端子を短絡したりすると、絶縁破壊や焼損をもたらすので、絶対に避けなければならない。

〜終わり〜
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