このページにおける、サイト内の位置情報は以下です。


社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電気事業法に基づく受電設備の工事計画の届出 総務担当理事 竹野 正二

受電設備は電気事業法による工事計画の届出、消防法による電気設備設置届など、これを設置する場合に各種の届けが必要であるほか、電気設備技術基準解釈や火災予防条例により、また労働安全衛生法により、設備の技術基準が定められている。本講では、解りにくいとされる電気事業法による工事計画届出の書類作成の方法を中心に述べる。

1 工事計画届出が必要となる設備

 自家用電気工作物として、受変電設備を新設する場合(これを法令では「設置の工事」という。)又は既設の受変電設備の一部を設置、改造又は取替えをする場合(これを法令では「変更の工事」という。)には、電気事業法に基づく手続きが必要となる。ここで「設置」とは設備の新設、増設、置き換えを、「改造」とは設備の構造、強度、機能等の変更を、「取替え」とは同一メーカー、同一形式のものに取り替えることを意味している。同じ製品以外のものに取り替える場合は置き換えとして取り扱われ、「設置」に該当する。

(1)工事計画の認可と事前届出

 電気事業法第47条には事業用電気工作物の設置又は変更の工事であって、公共の安全の確保上特に重要なものには経済産業大臣に認可申請をして、その工事計画の「認可」を受ける必要があること、それ以外のものは同法第48条により経済産業大臣に工事計画の「届出」をすることが定められている。

 認可と届出の違いは、前者は認可が下りるまでは工事に着工ができないが、後者は届出をしてから30日のうちに特に所轄の産業保安監督部から変更の指摘をされなければ工事に着工することができる。認可と届出の対象となる設備は第2図に示す。

 発電設備の場合は、その種類により対象となる範囲は異なり、複雑であるが、受変電設備の場合は、以下に述べるごとく極めて明快である。

(2)変電所と需要設備

(a)需要設備

 自家用電気工作物の受電設備は、電力会社から受電した電気を構外に送らない限り需要設備として取り扱われる。電気事業法施行規則(以下、「施行規則」と略す。)第65条に基づく別表第2「四 需要設備」において「設置の工事」の場合「受電電圧1万V以上」のものが工事計画の届出の対象となることが示されている。したがって、高圧受電の場合は工事計画の届出は不要である(平成15年3月の施行規則改正までは、受電容量1,000kW以上の高圧需要家の受電設備は工事計画の対象であった。)。ただし、高圧受電設備であっても大気汚染防止法で定める「ばい煙発生施設」に該当する非常用予備発電機がある場合や出力7.5kW以上の空気圧縮機があり、振動規制法や騒音規制法で定める規制区域内にある場合は工事計画の届が必要である(施行規則第65条第2項 別表第4)。

(b)変電所

 変電所は施行規則第1条第2項第一号に定義されている。この定義によると、「構内以外の場所から伝送される電気を変成し、これを構内以外の場所に伝送するため、又は構内以外の場所から伝送される電圧10万V以上の電気を変成するために設置する変圧器その他の電気工作物の総合体をいう。」となっており、要するに受電電圧10万V以上の特高受電所は、変電所として取り扱われ、これを別表2において「受電所」と定義している。

2 工事計画に記載する事項

(1)需要設備に係る「設置の工事」

 前述したように自家用電気工作物の受電設備のうち受電電圧1万V以上10万V未満のものは、需要設備として工事計画の届を工事着工30日前までに所轄の産業保安監督部に提出する必要がある。そのときの書類は次のものが必要である(施行規則第66条第1項)(電圧10万V以上の変電所になるものは、割愛する。)。

(a)工事計画届出書(様式第49)

 工事計画届出書は鑑書として次の様式が定められている。

 様式第49(第66条)

様式第49(第66条)

 

 備考1 用紙の大きさは、日本工業規格A4とすること。

    2 氏名を記載し、押印することに代えて、署名することができる。

    3 この場合において、署名は必ず本人が自著するものとする。

(b)記載すべき事項及び添付書類

 需要設備の工事計画届出書には施工規則の別表3「四 需要設備」の項に「記載すべき事項」とそれに「添付する書類」及び「工事行程表」が定められている。記載事項は「一般記載事項」と設備別に「個別記載事項」に分かれており、その記載内容を第1表に示す。

 これらは別表3「四 需要設備」に規定されている項目を表にしたものであるが、所轄の産業保安監督部では、記載方法についてより詳細に指導されているので、工事計画の提出前に具体的な書き方を相談することが大切である。特に主要設備の配置状況を示す平面図、断面図、単線結線図においては、電気設備技術基準解釈の規定に適合しているかを判断できるものになっていることが求められる。

 第1表 工事計画の届書の記載事項、添付書類、工事工程表

記載事項等 記  載  内  容
一般記載事項 ○需要設備に位置(都道府県郡市町村字を記載し、事業場の名称を付記する。)
○需要設備の最大電力及び受電電圧
○需要設備に直接電気を供給する発電所又は変電所の名称
個別記載事項 (1)遮断器
  1. 種類、電圧、電流、遮断電流及び遮断時間
  2. 保護継電装置の種類
(2)電力貯蔵装置
  1. 種類、容量、電圧、電流、個数及び用途
  2. 保護継電装置の種類
(3)(1)及び(2)の機器以外の機器(計器用変成器を除く。)
電圧1万V以上の機器に係る事項
  1. 種類、容量又は出力、電圧、相、周波数、回転速度及び結線法
  2. 保護継電装置の種類
添付書類
  1. 主要設備の配置の状況及び受電点の位置を明示した平面図及び断面図
  2. 単線結線図(接地線(計器用変成器を除く。)については電線の種類、太さ及び接地の種類も併せて記載すること。)
  3. 短絡強度計算書
工事工程表 (届出対象の電気設備の電気工事を開始する日、使用前安全審査を受ける工程など明確に工程内に入れることが重要)

(2)公害防止に関する書類(第66条第2項 別表5)

 公害関係法令に係る機器が設置されている場合は、次に示す工事計画書を提出する。

 (a)公害防止に関する工事計画書

 (b)別表第5に係る事項

 別表第5には、ばい煙、粉じん、ダイオキシンの発生源や水質汚濁に関係ある場合は、それらの施設に関して関係書類を提出するが、一般の受電設備の場合はこれらに関係する設備は少ないので記述を省略する。

 騒音規制法と振動規制法の対象となる特定施設(空気圧縮機、送風機などで7.5kW以上のもの)がある場合は、次の書類を提出する。

 第2表 騒音、振動発生施設の公害発生防止説明書

機器の種類 説 明 の 内 容
騒音発生施設 送風機、通風機、空気圧縮機、破砕機、粉砕機又は摩砕機の種類、容量、個数 騒音に関する説明書
振動発生施設 圧縮機、破砕機、粉砕機又は摩砕機の種類、容量、個数 振動に関する説明書

 (c)変更の工事又は工事計画の変更に係る場合は、変更を必要とする理由を記載した書類

3 「変更の工事」の届出

(1)変更の工事の対象となる設備

 工事計画の届をした特別高圧受電設備で、電圧10万V未満の受電設備のうち、第3表に掲げるものを設置、改造等をする場合は、工事計画の変更届をすることになる。変更の工事の内容は、保安上重要なものに限定されている。

 第3表 変更の工事の対象となる設備(需要設備)

変更の工事の対象となる設備 変更の工事の内容
電力会社の施設と連係している遮断器 設置、改造(20%以上の遮断電流の変更の場合)又は取替え
電圧1万V以上、容量8万kWhの電力貯蔵装置 設置又は改造(20%以上の容量又は出力の変更)
上記①及び②以外の機器(計器用変成器を除く。) 電圧1万V以上、容量1万kWh以上又は出力1万kW以上のものの設置、改造(20%以上の電圧、20%以上の容量又は出力の変更)又は取替え