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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電気関係報告規則について 竹野正二

電気関係報告規則は、電気事業法(以下「法」という。)第106条の規定に基づき、電気事業者及び自家用電気工作物設置者に対して、年報や半期報等定期的に報告するもの、感電等による死傷、電気火災、主要電気工作物の破損、供給支障、ダムによって貯留された流水の異常放流、その他社会的に影響が大きな事故が発生したとき報告する「事故報告」及びポリ塩化ビフェニル(PCB)の処分に関する報告を経済産業大臣又は電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長に行う報告義務を課すとともに、その報告の範囲、方法等について定めている。これらの報告のうち事故報告とPCBに係る報告について平成28年4月1日と平成28年9月23日に改正された内容を中心に紹介する。

報告の対象者

 電気事業者は、小売電気事業者、一般送配電事業者、送電事業者、特定送配電事業者及び発電事業者となっているが、事故報告の対象者は同報告規則第3条により、小売電気事業者を除く電気事業者となる。このうち発電事業には電気事業法施行規則(以下「施行規則」という。)第48条の2により「特定発電用電気工作物の小売電気事業等用接続最大電力の合計が200万kW(沖縄電力株式会社の供給区域にあっては、10万kW)を超えることとする。」と限定されている。要するに発電事業者の場合は沖縄を除き、小売電気事業等用接続最大電力が200万kWを超える場合は、発電事業用電気工作物の設置者として事故報告をし、それ以外の発電事業者は自家用電気工作物の設置者として事故報告をすることになる。(法第38条第4項各号)

 (注)特定発電用電気工作物は、法施行規則第第3条の4の各号に規定されており「出力が1,000kW以上であり、出力の値に占める小売電気事業等用接続最大電力の値の割合が50%(出力が10万kWを超えるものは10%)を超えていること及び発電電力量に占める小売電気事業等の用に供するためのももの割合も50%(出力が10万kWを超えるものは10%)を超えることが見込まれる発電用電気工作物を指している。

電気事故報告

(1) 事故の種類ごとに報告先

 電気関係報告規則(以下「報告規則」という。)により報告しなければならない事故は、報告規則第3条において事故の種類ごとに報告先が規定されている。原子力発電工作物については原子力規制委員会の規則により、鉄道・軌道関係のものについては国土交通省の規則により規定されているので、この報告規則では適用除外とされている。(表1)

 表1からも解るように事故は、大きく感電事故、電気火災事故、主要電気工作物の損壊事故、供給支障事故及び発電支障事故に区分されている。このほか自家用電気工作物では自家用電気工作物の地絡事故等により配電線を停電させる波及事故(表1の11)がある。

 これらの事故の定義は報告規則第1条第2項におい定義されており、とくに主要電気工作物については詳細に規定されているので次項において述べる。この第3条の表は、事故報告を要するか要しないかを判断する重要なものであるので、経済産業省の内規「電気報告規則第3条の運用について(内規)」(20160401商局第1号 平成28年4月1日)に詳細に規定されている。

(2)事故報告と期限

 事故報告には、事故を知った時から24時間以内可能な限り速やかに報告する所謂「速報」事故を知った日から起算して30日以内に様式(供給支障事故等で原因が自然現象による 事故の場合は不要)により報告する所謂「詳報」がある

 速報は事故な発生日時、場所、事故の電気工作物と事故の概要を電話等により報告すればよいことになっている。

(3)主要電気工作物

 電気工作物は、その種類も大きさも多種多様である。今後の電気保安規制から勘案して重要な電気工作物の事故のみを事故報告の対象としており、詳細は報告規則第1条2項第4号に定められており、主なものを上げると発電所・変電所の変圧器、電力用コンデンサ、分路リアアクトル、調相器等は電圧170kV以上、容量10,000kVA以上のものが主要電気工作物となっている。

 水力発電所の場合はダム、導水路等が、火力発電所の場合はタービン、ボイラ、ばい煙処理施設等の原動力関係の設備が主要電気工作物となっている。

 燃料電池発電所、太陽電池発電所及び風力発電所にあっては、従来出力500kW以上のものの事故が報告の対象となっていたが太陽発電と風力発電は最近の事故の公衆災害に対応して平成28年9月23日の改正により、表1に示されているように太陽発電は出力50kW以上風力は出力20W以上のものが事故報告の対象となり、それぞれの発電機出力が発電機は50kWと20kW以上のものが主要電気工作物となっている。逆変換装置の場合も同様である。

 自家用電気工作物である需要設備の場合は、電圧10kV以上の配電線に接続する遮断器と共に、変圧器、周波数変換機器、整流機器、電力用コンデンサ、調相器、分路リアクトルにあっては、何れも電圧10kV以上で容量10,000kVA以上のものが主要電気工作物となっている。電線路がある場合は電線と支持物とも50kV以上のものが主要電気工作物となっている。

公害防止に関する届出

 電気工作物に関する公害防止関連の規制は、電気事業法に基づき経済産業省が行うことになっている。従って大気汚染防止法、水質汚濁防止法、騒音規制法等に基づく報告事項は報告規則第4条に規定されている。大気汚染防止法、水質汚濁防止法に関係が深いのは火力発電所であり、騒音規制法に関係が深いのは変電所である。これらの関係の深いものについて紹介する。

(1) 大気汚染防止法関係の届出(第1号、第2号)

 次の場合にあらかじめ届出をする。現に設置されている電気工作物がばい煙発生施設又は一般粉じん発生施設となった場合は30日以内に届出をする。

① ばい煙発生施設の設置又はばい煙量、ばい煙濃度、煙突の有効高さを変更する場合

② 一般粉じん発生施設からの一般粉じんの排出又は飛散の防止に係るものを変更する場合、ばい煙発生施設に該当するものは、発電設備では燃料の燃焼能力が重油換算で1時間当たり50リットル以上のガスタービン及びディーゼルエンジン(概ね出力190kW程度)又は燃料の燃焼能力が重油換算で1時間当35リットル以上のガスエンジン及びガソリンルエンジンである。一般粉じんを排出する施設は、コークス炉等があるが電気工作物ではない。

(2) 水質汚濁防止法関係の届出

 水質汚濁防止法は、特定施設に該当する施設に規制されることになっており、この施設を設置する場合又はその施設の使用方法、汚水の処理方法、排出水の汚染状態又は量等の変更の場合に届出をする必要がある。(第4号)

 特定施設となる電気工作物としては、石炭火力と発電所の排ガス処理施設がある。

(3) 騒音規制法関係の届出

 騒音特定施設を有する発電所、変電所、開閉所等の設置場所が騒音規制法の指定地域となった場合又は指定地域内に設置されている特定施設の設置者で氏名、住所、所在地等の変更があった場合は届出をする必要がある。

 騒音規制法の対象となる特定施設は、電動機等の原動機の出力が7.5kW以上の空気圧縮機、送風機、微粉炭燃焼用機器等である。

(4) PCB含有電気工作物の届出

 平成28年8月1日に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(以下「PCB特措法」という。)が施行され、高濃度ポリ塩化ビフェニル使用製品の所有事業者は、高濃度ポリ塩化ビフェニル使用製品の種類や、保管の場所が所在する区域に応じて、定められた期間内に処分等をしなければならないこととなった。

 変圧器や電力用コンデンサなど電気工作物である高濃度ポリ塩化ビフェニル使用製品(以下「高濃度PCB含有電気工作物」という。)については、電気事業法の定めるところによる届出や処分等をすることとされている。PCB特措法の改正に関連して平成28年9月23日にPCBを含有する電気工作物に関する各種の報告は電気関係報告規則(以下「報告規則」という。)に規定された。高濃度PCB含有電気工作物の使用禁止は電気設備技術基準第19条第14項に規定されている。

① 用語の定義と規制対象
高濃度ポリ塩化ビフェニル含有電気工作物」の定義は、報告規則第1条第2項第十三号に、「使用されている絶縁油に含まれるポリ塩化ビフェニルの重量の割合が0.5パーセントを超えるものをいう。」とされている。規制の対象となるPCB含有電気工作物は、平成28年経済産業省告示第237号において、変圧器(一般送配電電気事業者等の柱上変圧器は除く。)、電力用コンデンサ、計器用変成器、リアクトル、放電コイル、電圧調整器、整流器、開閉器、遮断器、中性点抵抗器、避雷器及びOFケーブルの12のものが掲げられている。

② PCB含有電気工作物の届出
これはPCB含有電気工作物については新たに報告規則第4条の2に電気工作物の変更や廃止に係る届出に関する事象や届出期間及び届出様式が詳細に規定されている。
  報告規則第4条の2第1項は、PCB含有電気工作物を現に設置しているか又は予備として所有している者に対して、所有・設置が判明した場合、所有者の氏名・住所に変更があった場合、これらを廃止した場合、PCB含有絶縁油が構内以外に流した場合又は地下に浸透した場合に届をする必要があり、その時の様式や届出期限が規定されている。
 報告規則第4条の2第2項は、高濃度PCB含有電気工作物を現に設置しているか予備として所有している者に毎年度の管理状況を産業保安監督部長に届ける必要がある。

 

表1 電気関係報告規則第3条の表(平成28年3月28日,平成28年9月23日改正)
事      故 報告先
電気事業者 自家用電気工作物を設置する者

一  感電又は電気工作物の破損若しくは電気工作物の誤操作若しくは電気工作物を操作しないことにより人が死傷した事故(死亡又は病院若しくは診療所に入院した場合に限る。)

電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長 電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長

二  電気火災事故(工作物にあっては、その半焼以上の場合に限る。)

三  電気工作物の破損又は電気工作物の誤操作若しくは電気工作物を操作しないことにより、他の物件に損傷を与え、又はその機能の全部又は1部を損なわせた事故

四  次に掲げるものに属する主要電気工作物の破損事故

電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長 電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長

 イ 出力90万kW未満の水力発電所

 ロ 火力発電所(汽力、ガスタービン(出力1,000kW以上 のものに限る。)、内燃力(出力10,000kW以上のものに 限る。)、これら以外を原動力とするもの又は二以上の原 動力を組み合わせたものを原動力とするものをいう。以下 同じ。)における発電設備(発電機及びその発電機と一体 となって発電の用に供される原動力設備並びに電気設備の 総合体をいう。以下同じ。)(ハの掲げるものを除く。)

 ハ 火力発電所における汽力又は汽力を含む二以上の原動力を組み合わせたものを原動力とする発電設備であて、出力1,000kW未満のもの(ボイラに係るものを除く。)

 ニ 出力500kW以上の燃料電池発電所

 ホ 出力50kW以上の太陽電池発電所

 ヘ 出力20kW以上の風力発電所

 ト 電圧17万V以上(構内以外の場所から伝送される電気 を変成するために設置する変圧器その他の電気工作物の総 合体であって、構内以外の場所に伝送するためのもの以外 のものにあっては10万V以上)30万V未満の変電所(容 量30万kVA以上若しくは出力30万kVA以上の周波数変 換機器又は出力10万kVA以上の整流機器を設置するもの を除く。)

 チ 電圧17万V以上30万V未満の送電線路(直流のものを除く。)

 リ 電圧1万V以上の需要設備(自家用電気工作物を設置する者に限る。)

五  次に掲げるものに属する主要電気工作物の破損事故(第一号、第三号及び第八号から第十号までに掲げるものを除く。)

経済産業大臣 経済産業大臣

 イ 出力90万kW以上の水力発電所

 ロ 電圧30万V以上の変電所又は容量30万kVA以上若しくは出力30万kW以上の周波数変換機器若しくは出力10万kW以上の整流機器を設置する変電所

 ハ 電圧30万V(直流にあつては電圧17万V)以上の送電線路

六  水力発電所、火力発電所、燃料電池発電所、太陽電池発電所、又は風力発電所の属する出力10万kW以上の発電設備に係る7日間以上の発電支障事故

電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長 電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長

七  供給支障電力が7,000kW以上7万kW未満の供給支障事 故であって、その支障時間が1時間以上のもの、又は供給支 障電力が7万kW以上10万kW未満の供給支障事故であっ て、その支障時間が10分以上のもの(第九号及び第十号に 掲げるものを除く。)

電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長  

八  供給支障電力が10万kW以上の供給支障事故であって、その支障時間が10分以上のもの(第十号及び第十一号に掲げるものを除く。)

経済産業大臣  

九  電気工作物の破損又は電気工作物の誤操作若しくは電気工 作物を操作しないことにより他の電気事業者に供給支障電力が7,000kW以上7万kW未満の供給支障を発生させた事故であって、その支障時間が一時間以上のもの、又は供給支障電力が7万kW以上10万kW未満の供給支障を発生させた事故であって、その支障時間が十分以上のもの(第三号に掲げるものを除く。)

電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長  

十  電気工作物の破損又は電気工作物の誤操作若しくは電気工 作物を操作しないことにより他の電気事業者に供給支障電力 が10万kW以上の供給支障を発生させた事故であって、そ の支障時間が十分以上のもの

経済産業大臣  

十一  一般送配電気事業者の一般送配電気事の用に供する電気 工作物又は特定送配電事業者の特定送配電事業の用に供する 電気工作物と電気的に接続されている電圧3,000V以上の自家用電気工作物の破損事故又は自家用電気工作物の誤操作若しくは自家用電気工作物を操作しないことにより一般送配電事業者又は特定送配電事業者に供給支障を発生させた事故

  電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長

十二  ダムによって貯留された流水が当該ダムの洪水吐きから異常に放流された事故

電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長 電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長

十三  第一号から前号までの事故以外の事故であって、電気工作物に係る社会的に影響を及ぼした事故

電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長 電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長