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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
リレーシーケンスの基礎 富士テクノサーベイ(株) 山崎 靖夫

シーケンス制御はJIS(JIS Z 8116及びJIS B 3500)によれば、「予め定められた順序に従って、制御の各段階を逐次進めて行く制御」と定義され、エレベータ、自動販売機、信号機や工場の自動生産ラインなどに適用されている。リレーシーケンスを理解し、その設計、製作、運転保守をするためには、図面の見方、書き方の知識が重要である。本講では、リレーシーケンスの図示方法と基本的なリレーシーケンス回路について解説する。

1.リレーシーケンスの図示方法

 シーケンス制御はJIS(JIS Z 8116及びJIS B 3500)によれば、「予め定められた順序に従って、制御の各段階を逐次進めて行く制御」と定義され、エレベータ、自動販売機、信号機や工場の自動生産ラインなどに適用されている。

 リレーシーケンスを理解し、その設計、製作、運転保守をするためには、図面の見方、書き方の知識が重要である。シーケンス制御に使われる代表的な図面の利用目的は第1表に示すとおりである。

( 1 ) 配線図

 配線図はリレーシーケンスを含む制御装置などの製作や点検などに用いるため、所定の記号を使って描いたものである。シーケンスを構成した制御盤は、一般にその前面側に制御機器(器具)を取り付ける一方、その裏面側で配線が行われる。したがって、配線図には制御盤における器具の配置及びこれらの器具が備える端子間の接続が分かりやすいように裏面側から見た器具の位置及び配線が具体的に示されている。すなわち、配線図には器具の位置を表す位置符号、器具の端子番号、器具相互間の配線を示す配線番号などが記載されている。このようなことから配線図は裏面接続図と呼ばれている。

( 2 ) 展開接続図

 展開接続図はシーケンス制御の動作順序が分かるように、その動作原理から回路構成を示したリレー回路図であり、シーケンス回路図とも呼ばれている。

 この展開接続図は例えば第1図または第2図のように示される。第1図は縦書き展開接続図、第2図は横書き展開接続図といわれる。縦書き接続図の場合は左から右へ、横書き接続図の場合は上から下へシーケンス制御の作動が進むように描く。また、展開接続図は電源を切った状態で描かれるほか、手動接点は手を放した状態、その他の接点は休止または通常あるべき状態で描かれている。第1図の横線または第2図における縦線は制御母線であり、交流の場合R、Tで、直流の場合はP、Nで表され、それぞれ電源ラインを意味している。

 なお、これらの図でA及びBはa接点、C及びEはリレー、CaおよびEaはそれぞれリレーC及びEが備えるa接点、Dはb接点、Xは出力である。

( 3 ) 論理図

 シーケンス制御は接点をオンまたはオフする動作を基本とする。言い換えるとシーケンス制御は、予め定められた順序または条件に従って不連続な動作(2値変化)を行い、所定の変化を逐次的に作り出す制御ともいえる。このため2値信号(オンまたはオフ)を2値論理として表したシーケンス図を論理図またはロジック図という。

 例えば、第2図に示した展開接続図を論理図に置き換えると第3図に示すようになる。第3図でF1はOR(論理和)回路であり、AまたはBの条件(接点Aがオンまたは接点Bがオン)のときにCが出力される。また、F2はNOT(否定)回路であり、接点Dがオンのときは出力されず、接点Dがオフのとき出力される論理を示す。F3はAND(論理積)回路であり、AND(F1)およびNOT(F2)の両方から出力されたときXを出力する。

( 4 ) フローチャート

 フローチャートはコンピュータのプログラミング時に使われる流れ図(フローチャート)の図記号を用いたもので、シーケンス制御の作動順序を整然と表現した図である。

( 5 ) タイムチャート

 タイムチャートは例えば第4図に示すように横軸に時間を、縦軸に接点やリレーなどの動作(非動作:0、動作:1)として表した図である。タイムチャートを用いると、接点や入・出力信号の時間的変化を容易に理解することができる。

2.基本的なリレーシーケンス回路

( 1 ) 自己保持回路

 自己保持回路はリレーに与えられた入力信号をみずからの接点によって動作回路を作り、その出力状態を維持し続ける回路である。この回路は例えば第5図に示すように構成され、次の順序で動作する。

 ① スイッチAがオン(H)すると、リレーXが励磁される。

 ② スイッチAと並列に接続されている接点 Xa がオンになる。

 ③ この状態でスイッチAをオフにしても、接点 Xa でバイパス回路が形成されているため、オン状態を維持し続ける。

 自己保持回路はこのようにしてオン状態を維持する。この状態からB接点のスイッチBを開くと、リレーXに流れる電流が断たれるので、リレーXは復帰して最初の状態に戻る。

( 2 ) 先行優先回路

 先行優先回路は複数のリレーのうち、いずれかのリレーが動作しているときに、後から別な信号が入力されてもこれを無視する回路である。

 先行優先回路の一例を第6図に示す。この回路は次のように動作する。

( a ) スイッチAを先にオンした場合

 ① スイッチAがオンされるとリレーXが動作する。

 ② するとリレーY側回路のリレーXの接点がオフする。

 ③ このためスイッチBをオンしてもリレーYは動作しない。

( b ) スイッチBを先にオンした場合

 ① スイッチBがオンされるとリレーYが動作する。

 ② するとリレーX側回路のリレーYの接点がオフする。

 ③ このためスイッチAをオンしてもリレーXは動作しない。

 先行優先回路は電動機の正転・逆転制御などに適用される。電動機は正転運転中に逆転の指令が、または逆転運転中に正転の指令が与えられると不都合が生ずる。このため先行優先回路を設けて正転運転中は逆転操作を無視し、逆転運転中は正転操作を無視するようにして、運転中の電動機制御に不都合が生じないようにする。

( 3 ) 限時回路

 限時回路には限時動作瞬時復帰形(オンディレイタイマ)、瞬時動作限時動作形(オフディレイタイマ)、限時動作限時復帰形の3種類がある。

( a ) 限時動作瞬時復帰形

 この限時回路は第7図に示すように構成され、スイッチAを閉じてから一定時間経過するとリレーXが動作し、接点が閉路する一方、スイッチAを開くと、その瞬間にリレーXの接点が復帰する。

( b ) 瞬時動作限時復帰形

 この限時回路は第8図に示すように構成される。この回路はスイッチAを閉じた瞬間からリレーXの接点が動作し、閉路する一方、スイッチAを開いても、リレーXの接点はすぐに復帰せず、一定時間リレーXの接点が閉のまま保持される。

( c ) 限時動作限時復帰形

 この限時回路は第9図に示すように構成され、スイッチAを閉じてから一定時間経過後、リレーXの接点が動作し、閉路(オン)する。次にスイッチAを開いても一定時間、リレーXの接点が保持される。

 これらの限時回路は流量や圧力のように時間的に変動しやすい物理量の検出スイッチや、一時的な外乱による誤動作防止などのほか、三相誘導電動機のY - △切換始動制御回路に用いられる。

( 4 ) フリッカ回路

 この回路は限時回路を組み合わせて一定間隔で接点のオンまたはオフを繰り返す回路である。第10図はその一例を示した回路図である。この回路でXは限時動作瞬時復帰形であり、Y及びZは瞬時動作限時復帰形の限時回路である。

 第10図に示したフリッカ回路は次の順序で動作する。

 ① スイッチAを閉じることによって、リレーXのb接点を経由してZが励磁される。

 ② Zの接点が閉じるのでリレーYが励磁される。

 ③ Yの接点は瞬時動作形なのでXが励磁され、一定時間経過後、Xのb接点が開く。

 ④ Zの接点も一定時間経過後に開く。

 ⑤ Yの励磁がなくなり、一定時間経過後Yの接点が開く。

 ⑥ Yの接点が開くとXの励磁がなくなり、Xのb接点が閉じる。

 ⑦ Zが励磁されるのでZの接点が閉じる。

 以降、①に戻り、順次この動作を繰り返し、Zの接点が一定時間でオン/オフを繰り返す。

 ちなみにZの接点にランプを接続すると点灯と消灯を繰り返す点滅回路ができる。

( 5 ) インタロック回路

 インタロック回路は同時に操作指令が出た場合に不具合が生ずる場合や、順序制御を行う場合に、誤った順番の操作指令が出たときの不具合を防止する役割を担う。例えば、電動機の正転・逆転操作をするシーケンス制御回路で、正転と逆転の操作指令が同時に与えられた場合、電動機の回転方向が不定となり、また電源が短絡するおそれもある。あるいは受電設備などで断路器を開放する場合、遮断器が切れていない状態で断路器を開放すると断路器で地絡・短絡事故が起きることがある。

 このような誤った操作を禁止する回路がインタロック回路である。例えば、第6図に示した回路ではスイッチAがオンしている限りスイッチBのオン操作またはオフ操作が無視される。スイッチBの操作が有効になるのはスイッチAがオフされたときに限られる。この回路はスイッチAを遮断器の動作制御にスイッチBを断路器の動作制御に用いるシーケンス回路に適用することができる。

 インタロック回路は機器の操作・運転の許可/禁止を行う制約条件が必要なところに使われる。