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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
三相誘導電動機の保護システム 旭化成エンジニアリング(株) 電気設計部 大川 美彦

 電動機の過負荷保護に関することを内線規程から引用すると、
 電動機の過負荷保護装置の施設(対応省令:第65条)

 (1)電動機には、焼損防止に有効な電動機用ヒューズ、電動機保護用配線用遮断器、熱動継電器(サーマルリレー)、誘導形継電器、静止形継電器などの電動機用過負荷保護装置を用いるか、過負荷の警報を発するような装置を用いること(解釈第169条)。

 (2)電源の欠相により著しく機能支障を生ずるおそれまたは損傷を受けるおそれのある電動機には、欠相による焼損を防止するため欠相に対する保護装置(警報で支障のない場合は、警報装置)を施設すること(勧告)。

 となる。ここでは主に三相誘導電動機の過負荷保護システムについて解説する。

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1.電動機の保護システム

 交流電動機に発生する故障の種類、保護装置及び処置をあげると第1表のとおりとなる。電動機に発生する各故障に対し、最適な保護システムを用いて適切な処置をとることにより、電動機の異常運転、電動機内部事故の外部への波及が防止できる。

 600V以下の低圧電動機では、配線用遮断器と熱動継電器により電動機回路の保護を行う。配線用遮断器により短絡事故を保護し、熱動継電器により電動機の過負荷及び拘束を保護する。

(1)配線用遮断器

 過電流引外し要素としては熱動式による長限時引外し要素と、電磁引外しによる瞬時引外し要素からなり、前者が過負荷保護、後者が短絡保護を行う。熱動式のほかに電磁式と称して、電磁石の動作をダッシュポットで限時をもたせたものがある。配線用遮断器は負荷までのケーブルの保護と、回路の短絡保護を行う。

(2)熱動継電器

 熱動継電器は負荷電流のI2R損失による発熱によってバイメタルを変形させ、接点を開路または閉路させて電動機用開閉器を引き外し、過負荷及び拘束保護を行う。熱動継電器の動作電流整定は電動機の始動電流により誤動作しないようにしなければならない。

2.電動機回路における保護器の選定

 電動機回路に施設される過電流保護器は、MCCBのほか、モータブレーカ、短絡保護専用遮断器(瞬時遮断式MCCB)、ヒューズ、電磁開閉器などが、単独または組合せによって構成される。電動機の過負荷、拘束保護と、電線の過電流保護の両機能を果たすもので、その保護特性は、電動機及び電線の許容温度に達する電流 - 時間特性以下でなければならない。

(1)モータブレーカによる電動機回路保護

 モータブレーカ単独の過電流引外し特性によって電動機と電線の両者の保護を行うものである。その動作特性は、モータブレーカの定格電流の200%における動作時間を、定格電流30A以下で3分以内、50A以下では5分以内とし、更に定格電流の600%の動作時間を2~30秒としている。モータブレーカの保護協調曲線を第1図に示す。

(2)配線用遮断器と電磁開閉器の組合せによる電動機回路保護

 電磁開閉器は過負荷保護を受け持ち、短絡保護は直列に接続した配線用遮断器(MCCB)で行う。MCCBと電磁開閉器を組み合わせて使用するうえで、次の点を検討しなければならない。

 (a)電磁開閉器とMCCBの合成保護特性曲線が、電動機と電線の許容電流 - 時間特性曲線の下側にあること。

 (b)定格負荷運転時の定常電流や始動電流で、保護機器が動作しないこと。

 (c)MCCBは十分な遮断容量をもつこと。

 (d)過負荷領域では電磁開閉器がMCCBよりも先に動作すること。

 (e)電磁開閉器の遮断可能電流以上の領域はMCCBが動作して電磁開閉器の過電流遮断能力の不足を補いバックアップ遮断を行うこと。

 以上の関係について、MCCBと電磁開閉器の組合せの場合の保護協調曲線を第2図に示す。

3.配線用遮断器の動作原理と動作特性

 本講座「配線用遮断器」項を参照するものとし、ここでは割愛する。

4.熱動継電器(サーマルリレー)の動作原理と動作特性

(1)動作原理

 サーマルリレーは電動機に流れる線電流により電動機の巻線温度上昇を間接的に検出する方式である。第3図に構造図を示す。動作原理はヒータエレメントに負荷電流が流れると、そのジュール熱がバイメタルに伝達される。バイメタルは2枚の膨張率が違う金属(黄銅とアンバーが使用される)を張り合わせたもので温度上昇により湾曲する。これにより押し板・作動レバーが左方向に押され、動作レバーを押すことで接点機構が反転する。その状態は引ばねにより保持される。リセットはリセットバーを押すことで復帰する。なお、リセットは手動/自動リセットの切り換えが可能なものもある。

(2)動作特性

 サーマルリレーの動作特性曲線を第4図に示す。コールドスタート特性はサーマルリレーが無通電の状態からサーマルリレーが動作するまでの特性、一方、ホットスタート特性は通常運転中(サーマルリレーに定格電流が通電されている状態)からサーマルリレーが動作するまでの特性である。

 ① 電動機定格電流の105%で不動作、120%では動作すること。

 ② 電動機の始動(拘束)電流で2~30秒の間で動作すること。

 上記は近年(RC目盛)のサーマルリレーでは、一般に電動機の定格電流に等しいヒータ整定電流のサーマルリレーを選定すれば実現できる。

5.サーマルリレー選定時の留意点

(1)始動時間が長い場合

 ブロワ、ファンなど慣性の大きな負荷を始動する場合は、始動時間が長く、標準のサーマルリレーでは動作してしまい適切な保護特性が得られない。飽和リアクトル付きサーマルリレーは、ヒータと並列に有鉄心の小型リアクトルを接続し、整定電流の200%程度までは標準特性とほとんど変わらず、それを超える電流域ではリアクトルの鉄心を飽和させリアクトルへの分流電流を多くしてヒータへの電流を制限し動作時限を長くする。

 [計算例]

 定格出力90kW、4極、50Hzの三相誘導電動機にブロワ負荷が直結されている。電動機と負荷の合成GD2 が276kg・m2である。この電動機が負荷を負ったまま始動を完了するには、およそ何秒を要するか。ただし、滑り - トルク特性は第5図であり、始動中の平均加速トルクは1,100N・mとする。

 電動機軸に換算した全慣性モーメントをJ〔kg・m2 〕、始動中の電動機の角速度をω〔rad/s〕、加速トルクをTとすれば、次の運動方程式が成り立つ。

formula005
formula005

 ∴ formula006 formula006

 始動期間をωが零からωnまで増加する期間と考えると、始動が完了するに要する時間は、

formula007        (1)
formula007        (1)
formula008
formula008
formula009
formula009

 (1)式に代入すると、

formula010
formula010

 したがって、始動を完了するのに要する時間はおよそ10秒である。

 この場合の標準サーマルリレー特性と飽和リアクトル付きサーマルリレー(SR付き)の保護協調曲線を第6図に示す。標準サーマルリレーでは始動時トリップしてしまう。

(2)保護継電器の選定

 電動機の使用方法も自動機械設備の普及発達、多様化から間欠運転及び変動負荷運転と多岐にわたっている。このため標準的なサーマルリレーでは必ずしも十分でない場合もあり、直接巻線温度を検出する埋込サーモスタット方式の併用を必要とすることもある。

 更に欠相運転の保護、反相による逆転防止なども必要とされる場合もあり、電動機の保護条件などにより適切な保護継電器を選択することが必要となる。

6.コントロールセンタ

 低圧スイッチギヤの一種であるが、主に低圧電動機負荷を対象にした組立品で、短絡保護には配線用遮断器が使われ、負荷の開閉には電磁接触器が使われている。JEMでは開閉器、保護、監視、制御機器が単位回路ごとに閉鎖箱に集合的に組み込まれた装置と規定されている。第7図にコントロールセンタの外観を示す。単位装置の収納数も両面収納では十数ユニットの段積みになることもある。第8図は標準的なコントロールセンタユニットとシーケンス回路図を、第9図はインテリジェントタイプのコントロールセンタユニットとシーケンス回路図を示す。インテリジェントユニットはユニット正面にあるLCD表示部及び操作キーによりデータを入力することにより過負荷、過負荷プレアラーム、瞬時過電流、欠相、地絡、地絡プレアラーム、不足電流アラーム、瞬停保護などの機能をもたせている。また、ネットワーク機能を有しているものもあり、コントロールセンタ、現場操作盤及び上位PLC間の制御・状態信号の伝送化により省配線・省スペース化が実現できる。

 [参考文献]

 三菱電機(株) 電磁開閉器技術資料集



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