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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
高圧進相コンデンサの保護(財)関東電気保安協会 研修・技術センター 講師 篠原 茂

高圧進相コンデンサの多くの故障は内部素子の絶縁破壊であり、過電流が流れることによって素子が焼損・炭化して内部アーク熱により絶縁油が分解・ガス化し内圧が上昇、コンデンサ容器を膨張させ、限界を超えると最終的に容器・ブッシングが破壊する。これを防ぐ方法として一般的に高圧限流ヒューズ(PF)を設置するとされていることについて解説する。

一般に高圧進相コンデンサの故障による二次災害を防止するには、コンデンサ回路に高圧限流ヒューズ(PF)を設置することが、高圧受電設備規程などに規定されている(第1図)。

第1図 高圧進相コンデンサ及び付属機器の保護回路第1図 高圧進相コンデンサ及び付属機器の保護回路

高圧進相コンデンサ絶縁劣化のメカニズムは、第1表に示すように内部素子が順次絶縁破壊を起こし、過電流が増加するようになる。また、過電流によって素子が焼損・炭化して内部アーク熱により絶縁油が分解・ガス化し、内圧が上昇し、高圧進相コンデンサ容器を膨張させ、限界を超えると最終的に容器・ブッシングが破壊する。

第1表 コンデンサ素子故障時の高圧進相コンデンサ電流変化率α第1表 コンデンサ素子故障時の高圧進相コンデンサ電流変化率α

高圧進相コンデンサの保護方式は、1. コンデンサ素子破壊から短絡に至った瞬間に短絡電流を遮断し、高圧進相コンデンサを回路から開放する高圧限流ヒューズ(PF)方式のほかに、2. コンデンサ素子の絶縁破壊による内圧上昇を検出し容器が破壊に至る前に高圧進相コンデンサを回路から開放する保護用接点方式、3. コンデンサ素子の絶縁破壊によって各相の静電容量の変化を捕らえて高圧進相コンデンサを回路から開放する中性点電位検出方式などが一般的に採用されている。

コンデンサ回路の線電流を変流器(CT)で検出して過電流を保護する方式では、コンデンサ回路を遮断するまでに数サイクル時間を要し、過電流が長い間流れるためにコンデンサが噴油破壊に至る確率が高くなる。

よって高圧進相コンデンサの保護には、一般的に限流ヒューズ(PF)方式が採用されている。なお、高圧進相コンデンサの定格容量が中容量(75〜100kvar)及び大容量(150〜300kvar)ものでは、PFの定格電流を適正に選定してもPFでは保護できない領域(PFが遮断する前にコンデンサケースが破壊する領域)が発生することがある。この場合、保護用接点方式などを併用することもある。

遮断器CBで保護する場合とPFで保護する場合を比較すると第2図に示すとおり、CBの遮断時間は、瞬時要素付き過電流リレーOCR(2サイクル程度)+CB(3サイクル程度)、即ちおおむね5サイクル程度であるのに対し、PFの遮断時間は1/4サイクル程度になり、PFの遮断時間は、CBの遮断時間の1/20程度になる。

第2図 高圧進相コンデンサ短絡時の限流ヒューズ(PF)による遮断と遮断器(CB)による遮断例第2図 高圧進相コンデンサ短絡時の限流ヒューズ(PF)による遮断と遮断器(CB)による遮断例

このようにPFは遮断時間がCBに比べて非常に短いため、高圧進相コンデンサ内部極間の絶縁破壊から生ずるアークエネルギーによるガスの蓄積量が少ない初期段階で電源が遮断され、高圧進相コンデンサの容器・ブッシングが破壊せずに済むものと考えられている。

したがって、一般的に高圧進相コンデンサの故障による二次災害を防止するには、コンデンサ回路に高圧限流ヒューズ(PF)を設置するのがよいとされている。