このページにおける、サイト内の位置情報は以下です。


社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
自家用電気設備の定期点検のポイント(1)事前準備 (財)関東電気保安協会研修・技術センター研修部講師 篠原 茂

自家用電気設備の定期点検は、年に1回程度の頻度で、電気設備を停止させて日常点検のほかに、測定器具などを使用して、接地抵抗測定、絶縁抵抗測定、保護継電器装置の動作試験などを行うとともに、活線状態では点検できない充電部の緩み・たわみ、注油、清掃などを実施します。本講では、定期点検を実施するうえでの事前準備のポイントについて解説します。
※テキスト中の図はクリックすると大きく表示されます
 

 自家用電気設備を安全に使用するために、電気事業法では自家用電気設備の設置者による自主保安体制の確立を定めています。
 自主保安体制のかなめをなしているものは、電気主任技術者の選任と保安規程を作成することです。保安規程の目的は、電気保安を確保するために必要な基準を定めることであり、電気主任技術者はこの目的を達成するための監督者であるといえます。これにより電気工作物を技術基準に適合するように維持することです。
 電気保安管理者の主な業務は、次の3点です。
① 設備の保安を確保して感電、火災、波及事故などの重大事故の未然防止を図ること。
② 事故が発生した場合は、その影響を最小限にとどめ、速やかに復旧すること。
③ 電気設備の劣化診断などを行い、予防保全に努めること。
 保安規程には、自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安のための巡視、点検及び検査に関する項目について具体的に定められています。点検・検査には、日常巡視・点検、定期点検、精密点検、臨時点検、竣工検査などの種類があります(第1表)。

 本講座では定期点検を実施するうえで、点検までの段取り、無停電による点検方法、点検のポイント、及び復電時の留意点などについて紹介したいと思います。



02.事前準備のポイント

 定期点検は、年に1回程度の頻度で、電気設備を停止させて日常点検のほかに、測定器具などを使用して、接地抵抗測定、絶縁抵抗測定、保護継電器装置の動作試験などを行うとともに、活線状態では点検できない充電部の緩み・たわみ、注油、清掃などを実施します。
 事前準備として、年間計画した実施月を設置者と2か月前程度までに協議し、具体的に実施期日を決定するようにします。

(1)実施日の決定確認

 当日の作業責任者は、設置者に実施日、時間の確認と、連絡責任者などへの立会いについて確認するようにします。  連絡責任者不在のときは、代務者の有無についても確認しておくようにします。

(2)作業前の一般的な設備概要の把握

(a)停電範囲と作業時間予定

 停電範囲は、断路器の電源側までの一部充電か、電気事業者の分岐開閉器(AS)または区分開閉器(PAS)による全停電で実施するかを確認します。  これらの停電範囲の種類により、作業の計画をたてます。  作業時間は、停電から送電まで余裕をもった時間を確保するようにします。

(b)受電設備の概要把握

 次の事項について、現場で十分確認をするようにします(第1図)。

① キュービクル式高圧受電設備における設置箇所として、屋外・屋上・地上・地下などの区分及 び屋内組立受電設備の設置階など
② 引込用分岐開閉器の種類として、高圧キャビネット・配電塔・構内柱・借室・電気事業者電柱 など
③ 引込用高圧ケーブルの種類として、CV・CVTなど
④ 主な機器・配線・保護装置の定格など(設備容量(kVA)、遮断器・開閉器の種類(LBS・OCB・ VCB・OS・その他)、保護継電器の種類(GR・DGR・OCR・その他) ) など

(3)作業前の周知徹底事項

 次の事項については、作業前に必ず周知徹底することが大切です。
① 業内容及び作業範囲
② 人員配置と作業分担
③ 作業手順
④ 高圧充電部と停電範囲
⑤ 停電及び送電時間
⑥ 検電の実施
⑦ 短絡接地器具の取付箇所
⑧ 服装及び安全要具の点検
⑨ 測定器具・工具の点検
⑩ 手直し業務、清掃業務の有無と内容
⑪ 操作時の呼称と復唱
⑫ 思いつき作業の禁止
 これらの項目については、作業責任者の下で事前にTBMを実施することが必要です。なお、TBMとは、Tool Box Meetingの略語:現場での作業に関する打合せを行うという意味です。

(4)定期点検時の作業手順

 定期点検は、複数の人員による構成で実施するため、作業者の安全を確保することが大切です。  第2図に作業手順の一例を示します。

 特に作業者間での誤解を招く事例をあげてみますと

(a)短絡接地器具の作業のとき

 「短絡接地器具を取る」というような表現では、作業者によって、「短絡接地器具を取り付ける」のか、「短絡接地器具を取り外す」のかがあいまいです。
 これらをはっきりさせておかないと、安全作業が確保されないので、この点を明確に周知徹底することが必要です。

(b)指差呼称の励行

 一動作ごとに指差呼称を励行することにより誤操作を防止できます。