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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
接地抵抗の測定 片岡技術士事務所(協会本部前事務局長)代表 片岡喜久雄

接地工事は保安上、機能上、経済上重要な役割を果たしている。電路に施すものは中性点用とB種接地工事であり、常時は充電されていないが事故時には充電されるおそれがある機器の外箱等に施すA,C,D種接地工事がある。(電気設備技術基準解釈第17、19条) ここでは接地抵抗の測定器、測定方法と測定上の留意点について解説する。
※テキスト中の図はクリックすると大きく表示されます

01.測定上の留意点

(1)接地抵抗は接触抵抗か

 文字どおり土壌に接した電極から大地に流れる電流に対する抵抗であることに間違いはない。しかし、土壌の抵抗率は金属に比べると段違いに大きい。このため金属の接触抵抗とは性質が大きく異なる。
 その違いは、金属の接触抵抗の影響範囲は電極との接触面のみと考えて実用上問題ないが、接地抵抗の場合は影響範囲が接地電極と土壌との接触抵抗のほかに大きな土壌の抵抗率により、接地電極から離れた箇所まで及ぶ。 したがって、接地抵抗は次のように定義される。 「接地電極から対地へ接地電流 formula001formula001 が流れると、接地電極の電位が周辺の大地より formula002formula002 高くなる。この電位上昇と接地電流の比 formula003formula003 をその接地電極の接地抵抗という」
 現在接地抵抗計として広く使用されている測定器はこの定義に基づいている。この場合の電位上昇の測定は、接地電極から十分離れた場所との間で測定しなければならない。第1図に電位上昇の概念を示す。
 また、第1表に大地抵抗率の数値例を示す。概算値として formula004formula004 が使われている。代表的な金属導体である銅の常温における抵抗率が formula005formula005 であることから大地の抵抗率がいかに大きいかが分かる。
 

(2)交流電源で測定すること

 大地、特に接地電極が埋設される表層付近の土壌は腐食有機物の混入などのため、電解質的な性質を持ち、直流電流を流すと成極作用のため、電流が流れにくくなり大きな誤差を生じるからである。
 使用交流電源の周波数は電源からの誘導の影響を分離するため、商用周波数以外のものを使用する。ただし、メッシュ接地など大規模接地の測定では電源容量から商用周波電源を使用し、抵抗算出時点で誘導分を消去している。
 また、接地抵抗は季節変化があり、冬季2月ごろ最大に、夏季8月ごろ最小になり、その変化幅は25%程度といわれている。


02.一般的な測定法

(1)コールラウシュブリッジ

 昭和40年代までコールラウシュブリッジが電解液の抵抗測定とともに、接地抵抗の測定に広く使われていた。第2図参照。
 
 電源として電池と、ブザーの音響部を外した構造の断続器により交流を得ていた。抵抗辺 formula006formula006 の値を適当に選び摺動子を移動させ、イヤホーンの最小音から次式の接地抵抗が得られる。これは接地極、補助極2個ずつのものである。
formula007
formula007
また、摺動線に対する目盛はformula008formula008 になっていた。 主接地極formula009formula009 、補助接地formula010formula010formula011formula011 について測定し、その値がformula012formula012formula013formula013formula014formula014 であれば主接地極の接地抵抗formula015formula015 は次式で求められる。
formula016
formula016

(2)直読式接地抵抗計

 現在では直読式接地抵抗計が一般的な接地抵抗の測定には主流になっている。原理は電圧降下法であり、測定接地極と電位測定補助極の電位差を測定電流で除して求めるが、計算は測定器内で自動的に行われる。
 電源は電池からインバータで数10mA程度の定電流の交流を得ている。 電源周波数は商用周波電流の誘導を避けるため、数100Hzとしている。 第3図参照。 
 
 通電電流が一定になっているのでE〜P間の電圧は接地抵抗に比例する。したがって、あらかじめ指示計の目盛を抵抗にしておけば接地抵抗値を直読することが出来る。
 E〜P間の電圧は微小なので、増幅して指示系を動作させている。フィルタは迷走地電流の影響を除くためのものである。

(3)補助電極について

 コールラウシュブリッジや直読接地抵抗計の補助電極は相互の影響を避けるため、測定する接地電極と電位測定電極E〜P間、電位測定電極と流電電極P〜C間はそれぞれ10m程度としている。電位測定電極の位置は測定接地電極と 流電電極の直線上が好ましいが、30°程度までは許容できるとされている。
 電位測定電極は20cm以上地中に打ち込めばよく、その接地抵抗は500Ω程度以下ならば誤差はない。


03.大規模接地の測定

 発変電所・受電所では雷害対策上構内の対地電位を常に均等に保つ必要から 地下50cm程度に裸銅線を網状に張り巡らすメッシュ接地を施し、更にメッシュの要所要所に打込み式接地電極を併用し接続している。
 メッシュ接地では接地電極が広大になるため、一般的な測定方法では誤差が大きすぎるため、メッシュ接地から十分離れた箇所との電位差から総体的な接地抵抗を測定する必要がある。第4図参照。
 また、建築構造体の接地抵抗の測定も全く同様の方法によっている。測定は接地網1辺の長さの4〜5倍の距離に流電電極を設け、測定のための電流による誘導を避けるため、反対側300〜600mに基準電極を設置して、これとメッシュ接地間の電圧を測定して接地抵抗を知るものである。
 この場合の電圧計は真空管電圧計、ディジタル電圧計のように内部インピーダンスの特に大きいものを使用しなければならない。
 測定電流はメッシュ接地の規模にもよるが20〜30A必要で、場合により柱上変圧器2台を直列に使用することもある。都会地では流電電極の設置箇所に困ることがあるが、管理者の許諾が得られれば下水など溜水マンホールは優れた流電電極の設置箇所である。
 測定は浮遊誘導電圧を除外するため電流の極性を反転させて測定し、次の式から真の電位上昇値を求める。第5図参照。
 
formula017
formula017
formula018
formula018


04.その他の測定

 コールラウシュブリッジなど、2個の接地極ごとの測定はD種接地抵抗の簡易測定法として補助接地極の接地が困難な場合などに利用されている。
 方法は停止した電源側の接地側電線と接地極の間を測定するもので、測定値から既知の当該B種接地の接地抵抗を差し引いて新設D種接地の抵抗値を得るものである。また、接地側電線の代りに建築構造体を使えば中規模以上の建築構造体の接地抵抗は、そのほとんどが1 Ω以下なので、測定値そのものを新設D種接地の抵抗値とみなすことが出来る。