このページにおける、サイト内の位置情報は以下です。


社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
ラプラス変換とその使い方1<基礎編>ラプラス変換とは何か 変換の基礎事項は 元東京電機大学短期大学教授 間邊幸三郎

 電気回路の過渡現象を学習すると「微分方程式を解く」作業に突き当たる。微分方程式を扱うには数学的に高度の知識が要求され、行く道を閉ざされた苦い経験をもつ人も多い。これから扱うラプラス変換は、「微分方程式を解く」のにあまり数学の知識に負担をかけないので(代数計算で済む)、数学力の弱い者にとっては強力な助っ人である。
 このシリーズは電気工学の過渡現象や制御工学等の分野で使用するのに差し支えない範囲の内容で、ラプラス変換を応用して計算する方法について解説する。第1回はラプラス変換とはどんな計算法なのかを概観し、この計算法における基礎事項について解説する。

講座を聴く

1.ラプラス変換の計算イメージと計算の流れ

 私たちが扱う電気回路は、電圧や電流などの電気的諸量を時間の関数として表す。そしてこれらの時間関数(t関数)からなる回路方程式(微分方程式)を解くのであるが、この方程式にラプラス変換という数学的操作を加えて別の関数(s関数)に変換し、s関数相互間の関係として計算し、その計算結果(s関数)を、ラプラス逆変換という数学的操作によりt関数に戻して答を知ろうというのである。その計算のイメージは第1図のようになる。

第1図 ラプラス変換の計算イメージ第1図 ラプラス変換の計算イメージ
第1図 ラプラス変換の計算イメージ

 例えば、抵抗RとインダクタンスLとの直列回路に直流電圧Eを印加した場合、回路に流れる電流を求めるというケースついて示すと、その計算の流れは第2図となる。

第2図 ラプラス変換の計算フロー第2図 ラプラス変換の計算フロー
第2図 ラプラス変換の計算フロー

 したがって、ラプラス変換による「電気回路の解き方」の計算手順は次の4ステップである。

 手順1 対象となる回路について、t関数による電圧方程式を立てる。(電圧方程式)

 手順2 電圧方程式の諸量をラプラス変換し、s回路方程式をつくる。(ラプラス変換)

 手順3 s回路方程式を求めている量のs関数X(s)について解く。(s回路計算)

 手順4 Xsをラプラス逆変換して、答であるxtを得る。(ラプラス逆変換)

2.ラプラス変換とは何か

 いま、時間関数 formula001 formula001 があるとき、

formula002
formula002

のように計算したものを formula003 formula003ラプラス変換という。

 つまり、 formula004 formula004 を「t=0からまで時間積分する」という数学的な加工を施したものを「f(t)のラプラス変換」と呼ぶことにするのである。

 ラプラス変換の計算イメージとしては、例えばf(t)が一定値Aであった場合は、そのラプラス変換は第3図のようになり、図中の緑色部がラプラス変換した値となる。

第3図 ラプラス変換の計算イメージ第3図 ラプラス変換の計算イメージ
第3図 ラプラス変換の計算イメージ

 計算式によれば、

formula005
formula005
formula006
formula006

となる。したがって、この計算例から分かるように、ラプラス変換の計算結果は、一般的にsの関数となるので、これからは formula007 formula007 のラプラス変換を formula008 formula008 と表すことにする。つまり、

formula009
formula009

 である。

3.主要関数のラプラス変換

(1) 時間関数が定数の場合

  定数の単位量をとりあげ formula010 formula010 の場合を考える。この場合は第3図においてA=1の場合なので、そのラプラス変換は次式のようになる。

formula011
formula011

(2) 時間関数がべき関数の場合

  ① formula012 formula012 の場合は、部分積分法を使用して次のようになる。

formula013
formula013
formula014
formula014

 ② formula015 formula015 の場合は、

formula016
formula016

(3) 時間関数が指数関数の場合

  formula017 formula017 の場合は、

formula018
formula018

(4) 時間関数が三角関数の場合

  ① formula019 formula019 の場合は、

formula020
formula020

 の関係にあるので、

formula021
formula021

 ② formula022 formula022 の場合は、

formula023
formula023

 の関係にあるので、

formula024
formula024

(5) 時間関数が双曲線関数の場合

 ①  formula025 formula025 の場合は、

formula026
formula026

 の関係にあるので、

formula027
formula027

 ②  formula028 formula028 の場合は、

formula029
formula029

 の関係にあるので、

formula030
formula030

 以上の計算で分かるように、時間関数をラプラス変換すると、その結果はsの関数となる。このため最も一般的な表記として、前にも述べたように時間関数f(t)のラプラス変換値をF(s)とする表記するのである。

 つまり、

formula031
formula031

 である。

 (6) 時間関数が微分形関数の場合

 ①  formula032 formula032 の時間微分 formula033 formula033 formula034 formula034 と表記すれば、 formula035 formula035 のラプラス変換は部分積分法により、

formula036
formula036

 上式で formula037 formula037 formula038 formula038t =0における値を表し、 formula039 formula039初期値という。

第4図 微分形関数第4図 微分形関数
第4図 微分形関数

 [例] 時間関数が電流 formula040 formula040 である場合は、(31)式から、次式となる。

formula041
formula041

 ② 時間関数が2階微分形である場合は、

formula042
formula042

(7) 時間関数が積分形関数の場合

 ① ラプラス変換の対象が formula043 formula043 の時間積分である formula044 formula044 の場合は、これを formula045 formula045 と表記すれば、 formula046 formula046 は部分積分法により、次のように計算される。

formula047
formula047
formula048
formula048
第5図 積分形関数第5図 積分形関数
第5図 積分形関数

 [例] 時間関数が電流 formula049 formula049 である場合は、(40)式から次式となる。

formula050
formula050

 ② 時間関数が2階の積分形である場合は、

formula051
formula051
formula052
formula052

 なお、ラプラス変換の表記には次のような方法もある。

formula053
formula053

 ここに、 formula054 formula054 は「 formula055 formula055 の後にある formula056 formula056 の中にある時間関数をラプラス変換したもの」を表す。

  formula057 formula057 はラプラス演算子(ラプラシアン)と呼ぶ。これまでの例でいえば、

formula058
formula058
formula059
formula059
formula060
formula060

のように表記する。

 これまでに扱った関数をまとめると第1表のようになる。

第1表 主要関数のラプラス変換表
第1表 主要関数のラプラス変換表第1表 主要関数のラプラス変換表

4.ラプラス変換の性質

 すべての時間関数に共通なラプラス変換の性質を第2表に示す。

第2表 ラプラス変換の性質(基本法則)
第2表 ラプラス変換の性質(基本法則)第2表 ラプラス変換の性質(基本法則)

5.まとめ

 (1) ラプラス変換の定義を知る。参考:計算イメージ

 (2) ラプラス変換計算法の仕組みを理解する。第2図。

[計算手順] ① 電圧方程式 ② ラプラス変換 ③ s回路計算 ④ ラプラス逆変換 の4ステップ。

 (3) 電気工学で使用頻度の高い時間関数(主要関数)について、t関数からs関数に変換する計算の方法を理解し、その結果をしっかりと記憶しておく。(第1表)

 (4) ラプラス変換に関する諸法則(基本法則)について、具体的な時間関数への応用の方法を知っておく。



前のページへ このページのトップへ